本研究の目的は、「禅宗様」の定着とその後の展開について、日本・中国の史料および伝統的建造物の調査、隣接領域での新しい学術成果を考慮しながら、対外交渉史の観点のもと個別具体的に解明することである。 唐代から元代までに創建された中国の建築や、鎌倉期から室町末期までに創建された日本の中世仏堂に関して、地域別・時代別に検討した結果、近代以降定着した「禅宗様」「大仏様」「和様」「新和様」「折衷様」といった様式概念のみでは認識・理解し得ない実態が散見された。また、大きく近畿・瀬戸内地方と東国とで中世仏堂の系譜に大きな差異がみられることもうかがえた。
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