研究課題/領域番号 |
23760608
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
恩田 重直 法政大学, 政策創造研究科, 准教授 (80511295)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 都市空間史 / 華南海域 / 港湾都市 / 租界 / 都市改造 |
研究概要 |
本研究課題の初年度である平成23年度は、主に広東省西部の歴史的な港湾都市である雷州ならびに広州湾(湛江)に関して、現地調査と文献調査を進めた。現地調査は平成23年12月20~31日の期間に行い、雷州城内に現存する7例の中庭型住居の実測及び聞き取り調査を実施した。また、文献調査は、平成23年7月12~28日の期間に、フランスのエクス・アン・プロヴァンスにあるArchives nationales d'outre-mer(国立海外公文書館)とイギリスのThe National Archives(国立公文書館)にて、主に19世紀以降の中国における租借地と関連する公文書の閲覧ならびに写真撮影を行った。 雷州における現地調査では、歴史的な雷州城の内城に焦点を当て、内城の空間構成を明らかにすることを目的に、立地条件や建築タイプの異なる中庭型住居の調査を行った。また、都市空間の特徴の一つである井戸について、周辺環境とともに実測調査を実施した。 また、フランスの国立海外公文書館における文献調査では、主に1899年からフランスが中国から租借した広州湾に関する公文書を蒐集した。中でも、1920年代の土地分譲に関連する公文書を見出したことは大きな収穫であった。広州湾における土地整備の過程を考察する上で、貴重な史料といえるからである。そして、イギリスの国立公文書館では、厦門や広州に関する公文書の蒐集に努めた。とりわけ、19世紀から20世紀にかけての土地契約文書を蒐集することができたことにより、租界設置後の都市空間の変化を分析する準備が整いつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、15世紀頃からはじまる大航海時代から現在に至る華南海域の港湾都市を対象として、海域を通じた交流を視野に入れながら、各港湾都市の成立、変容、再編の過程を建築史・都市史の観点から明らかにするとともに、空間形成に見られる通時代的な特質および都市相互の影響を総体的に解明することにある。具体的には、(1)華南海域の港湾都市の空間的特質、(2)租界の形成と既存の都市空間との関係、(3)民国期の都市改造の実施過程と都市ごとの相違、(4)新中国設立以降の都市政策と近年の都市再生、を明らかにすることを目的としている。 当初の本年度の計画は、広州湾(湛江)の史料蒐集ならびに現地調査に着手すること、華南海域の港湾都市の体系化に向けて、これまでの研究成果を整理することにあった。1点目については、フランスの国立公文書館において、関連する史料の蒐集を着実に行い、蒐集した史料をもとに現地調査の準備を進めている。また、2点目については、平成23年10月29~30日に、台湾の金門大学で開催された「2011年[門/虫]南文化国際学術研究討論会」において、「厦門城市史:建築與城市空間」と題した招待講演を行ったが、これはこれまでの研究成果をまとめるかたちで発表したものである。このように、現在までの達成度は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、実測調査を中心とした現地調査と西洋諸国における文献調査の双方を進めていく。現地調査は、雷州と広州湾を中心に実施する。とりわけ、広州湾に関しては、平成23年度の文献調査で見つかった土地分譲に関する公文書に記載された場所を特定し、考察を深めていく。一方、文献調査は、平成23年度の調査で、イギリスの国立公文書館が所蔵する華南海域の都市に関する公文書が非常に多いことがわかったため、平成24年度も引き続き、現地に赴き、史料蒐集に努める。また、大航海時代の華南海域の都市に関する史料を蒐集することを目的に、オランダ国立公文書館で文献調査を実施する。これらで得られた史料を踏まえながら、厦門や広州なども含めた華南海域の港湾都市の全体像を明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終的に次年度使用額が生じているが、これは、当初予定していた謝金が未使用であることによるところが大きい。その理由は、平成23年12月に実施した調査のデータ整理が年度内に完了しなかったことによる。現在のところ、4月末日に作業が完了する予定で進められている。 次年度使用額を含めた次年度の研究費で、最も大きな割合を占めているのは、旅費である。これは、現地調査、文献調査ともに海外にて実施することによる。イギリス及びオランダにおける文献調査は、平成24年6月に実施する予定であり、雷州と広州湾における現地調査は、平成24年11月前後に実施する予定で準備を進めている。特に、現地調査は実測調査を中心に進めるため、調査の補助として大学院生2,3名の旅費も含まれている。また、調査後には図面作成などのデータ整理を行う必要があるため、これらの作業に従事する大学院生に対して人件費を支給する予定である。この他に、物品費として、中国都市史関連の図書や現地調査で使用する備品などに、その他として、複写費や運搬費などに使用することを見込んでいる。
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