研究課題/領域番号 |
23760611
|
研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
海老澤 模奈人 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (40410039)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 近代建築史 / ドイツ / モダニズム / 建築保存・改修 / 住宅史 / ジードルンク |
研究概要 |
本研究の目的は、(1).1920年代後半を中心とする両大戦間期ドイツで建設されたジードルンク(住宅地区)の代表的な事例を概観し、関連資料を分析することにより、この時代のジードルンク建設における建築家たちの計画理念を明らかにすること(2).その中でも特定の事例について、建設後の保存・改変の状況を調査し、住み手による受容の実態を明らかにすること(3).(1)と(2)の関係を通して、住宅建築に反映された建築の近代主義の一面を考察することである。 初年度である平成23年度は(1)を中心テーマとした。日本において資料の収集と読み込みを進めるとともに、夏期に2週間の現地調査を実施し、西・南ドイツを中心に事例を幅広く視察することで、両大戦間期ドイツのジードルンク建設の概要把握に努めた。さらに(2)のケーススタディの端緒として、当時の合理的なジードルンク建設の代表例とされるツェレのO.ヘスラーの作品を、現地の関係者の案内のもとに視察し、当事者からの助言を得ることで、ジードルンクの保存・改修に関する問題点を把握した。さらにツェレの市民団体や住宅建設会社から建築の改修に関する一次資料を入手し、それらをもとに2本の口頭発表論文をまとめた(1本は平成24年度に発表)。そこでは、ヘスラーによるジードルンクの特徴を整理するとともに、彼の建築が経済的・機能的合理性を追求するあまり、建設後、改築や取り壊しを余儀なくされた状況を明らかにした。現時点ではまだ断片的な成果であるが、今後ケーススタディを重ね、(3)の考察を進めていくことで、本研究の意義が明らかになっていくものと考えている。 これらのケーススタディとは別に、関連する研究成果として、20世紀初頭ドイツの建築・都市・住宅に関する論文・口頭発表を3編、平成23年度中に発表した。それらは本研究テーマを補足するものと位置づけている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料を幅広く収集し、その代表例を実地で見学することで、両大戦間期ドイツのジードルンク建設の概要を把握することができた。また、ツェレ、フランクフルトに関しては、これから発展させるケーススタディの糸口をつかむことができた。とくにツェレについては、現地の関係者とのコンタクトを通じて一次的な資料や助言を得ることができ、その成果を2本の口頭発表論文としてまとめることができた。なお、平成23年度は西・南ドイツのジードルンクの調査が中心となり、ベルリン、デッサウなど東側の事例を視察することができなかったが、その点は平成24年度以降の課題としたい。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って、現地での建築・資料調査および資料の読み込みと分析を進めていきたい。平成24年度は、フランクフルトとデッサウに関するケーススタディを中心とする予定である。夏期の現地調査において、この両都市のジードルンクに関する資料収集・建築調査を重点的に実施し、その成果を同年度末もしくは次年度初めを目途に学術的な成果として発表したい。また、1年目に視察できなかったジードルンクの代表例(とくにドイツ東部)を見学し、両大戦間期ドイツのジードルンク計画の概要把握を進めたい。なお、1年目の調査を通じて、ドイツのジードルンク計画ではオランダ、オーストリアといった近隣諸国との関係も重要であることがわかった。それゆえ平成24年度以降、比較対象としてのそれら近隣地域の代表例についても、視察の行程に含めることを考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度はほぼ計画通りに執行した。若干の残額は下記の次年度使用計画と合わせて執行する予定である。 次年度(平成24年度)は当初計画通り、夏期現地調査の旅費、図書購入費、資料収集に必要な諸経費(文献複写費、資料郵送費など)に研究費を使用する計画である。
|