研究課題/領域番号 |
23760611
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
海老澤 模奈人 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (40410039)
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キーワード | 近代建築史 / ドイツ / モダニズム / ジードルンク / 建築保存・改修 / 集合住宅 / 住宅史 |
研究概要 |
本研究の目的は、 (1).1920年代後半を中心とする両大戦間期ドイツで建設されたジードルンク(住宅団地)の代表的な事例を概観し、関連資料を分析することにより、この時代のジードルンク建設における建築家たちの計画理念を明らかにすること (2).その中でも特定の事例について、建設後の保存・改変の状況を調査し、住み手による受容の実態を明らかにすること (3).(1)と(2)の関係を通して、住宅建築に反映された建築の近代主義の一面を考察することである。 研究2年目にあたる平成24年度は、日本において資料の収集と読み込みを継続した。さらに平成25年3月に10日間の現地調査を実施し、(2)のケーススタディのための資料収集と関係者からの聞き取りを行った。その主な訪問地は、ツェレ、デッサウ、フランクフルトである。ツェレではオットー・ヘスラー協会の協力のもと、関係者への聞き取りと住戸の視察を行い、ツェレ市史料館で建築家ヘスラーとジードルンク・ブルームレーガーフェルトに関する資料を収集した。デッサウではバウハウス研究史料館の協力を得て関連資料を収集し、テルテン・ジードルンクを視察した。フランクフルトではジードルンク・プラウンハイム協会、エルンスト・マイ協会を訪問して助言を得るとともに、関係者の案内のもとで建築を視察した。これらのケーススタディの成果は、平成25年度中に随時発表する予定である。さらにこの現地調査では、上記のケーススタディの相対化のために同時代の他都市の集合住宅の現状も視察し、関連資料を収集することができた。その内容も今後の成果に反映させていきたい。 平成24年度中の成果としては、前年度からの研究の蓄積をもとに、ツェレのジードルンクに関する口頭発表論文を1編、フランクフルトのジードルンクに関する紀要論文1編、口頭発表論文1編、新刊紹介1編を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料を幅広く収集し、その代表例を実地で調査することで、研究対象とする両大戦間期のジードルンクの建設の概要を把握することができている。また、ツェレ、フランクフルト、デッサウに関しては、現地の関係者とのコンタクトを通じて、ケーススタディで必要な一次資料や助言を得ることができ、最終的なアウトプットのための準備は整いつつある。実際にこれまで研究課題と関連する計4本の口頭発表論文(投稿済み・発表予定の1本を含む)と2本の紀要論文を作成するなど、段階的な研究成果の発表も進められている。以上より、現在まで研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は研究課題最終年度にあたる。この年度中の平成25年9月より26年3月まで、研究代表者はドイツのミュンヘン工科大学で在外研究を実施することになった。ゆえに同年度に関しては、当初の研究スケジュールを変更し、9月より集中的にこの研究課題に取り組むことができる。 平成25年8月までは日本において、これまで収集した資料の整理とアウトプットを進める。9月からはドイツに滞在して、資料収集と現地調査、論文執筆を進めたい。ケーススタディのための現地調査の対象としては、フランクフルトのジードルンク(継続)、カールスルーエのダマーシュトック・ジードルンク、ベルリンのジードルンクを予定している。調査と並行して、収集した資料をもとに論文執筆を進め、3年間の成果を同年度末もしくは次年度始めを目途に発表したい。 また、1、2年目には視察できなかったジードルンクの事例(特に東・北ドイツ)を補足的に訪問し、その特徴を把握したい。さらにこれまでの研究を通じて、ドイツのジードルンク計画は、イギリスの田園都市計画からの影響や、同時代の他国(オランダ、オーストリア、フランス)の事例との影響関係が重要であることがわかった。ゆえにドイツ長期滞在という利点を生かして、比較対象としての近隣諸国の事例に関する視察と資料収集も、25年度の現地調査の行程に加えたいと考えている。この作業は、本研究のケーススタディを相対化し、その基盤を補強するために必要なものと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
現地調査の旅費(ミュンヘン(25年9月~26年3月滞在予定)から調査対象の各都市を訪問するための旅費)、図書等資料購入費、そして資料収集に必要な文献複写費などを中心に研究費を使用する予定である。平成24年度の未使用額(約5万円)は主に図書資料購入費に充てる予定である。
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