研究概要 |
本研究課題は、実用化を視野に入れた新規熱電変換材料として有望な、半導体的電気特性を有するIII族(13)元素(Al,Ga,In)と遷移金属(Ru,Fe等)からなる金属間化合物を創製し、①p型及びn型材料の作製と②性能指数の向上、③物性の起源を原子間結合性の見地から、即ち、電子密度分布解析から明らかにすることである。 研究対象となる物質は、遷移金属とIII族元素の比が1:2のRuGa2と、1:3のRuGa3,FeGa3,RuIn3である。初年度は、相対密度95%以上の物性評価に資する材料作製方法の確立を行った。前年度に引き続き、本年度もこれらベース合金の到達しうる無次元熱電性能指数ZTmaxを緩和時間一定のもと、ボルツマン輸送方程式を用いて計算を行ったところ、目標の値であるZT=1.0を越える可能性を示すことを明らかにした。本年度は、特に、n型材料として高い特性を示す新規材料の創製に注力した。 理論計算の結果を受け、ノンドープで高いZTを示すRuGa2に関して、Ruを各種ドーパント(Co,Rh,Ir,Ni,Pd)で置換し、熱電特性に与える影響を詳細に検討した。実際に、電子ドープによりn型の材料の創製に成功し、その中でも、Ir-Ru置換で最も高いn型特性(ZT=0.31)を示した。ドーパントの種類により物性が異なる原因について、KKR-CPA法を用いた電子構造計算を行い、その起源を明らかにした。その他、RuIn3,FeGa3,RuGa3ベースの金属間化合物に対しても、キャリアドープを行い、p型・n型ともに性能向上に成功した。熱伝導率低減の為の、ナノ粒子作製を取り入れたプロセスの確立に成功し、熱伝導率の低減により、RuGa2においてZT=0.6を達成した。 物性の起源を探るための電子密度分布解析に関しては、現在解析が進行中であり、今後の課題としたい。
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