研究課題/領域番号 |
23760630
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上高原 理暢 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (80362854)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 骨修復 / 骨再生 / リン酸カルシウム |
研究概要 |
病気や事故による骨欠損の回復は、術後の患者の生活の質(QOL)の向上に欠くことのできないものである。本研究では、自家骨や細胞移植を伴わなくても早急な骨再生が期待できる骨修復材料の開発を目指し、骨に働きかけ再生を促す吸収性骨修復材料を創製することを目的とした。今年度は、湿式法を利用した独自のプロセスにより、固溶限界以下で種々のケイ酸含有量を有するケイ酸含有α型リン酸三カルシウムの合成に成功した。これまでには、ケイ酸は骨形成を促進することが報告されていたが、ケイ酸の存在状態をきちんと制御したケイ酸含有リン酸三カルシウムを合成できていなかった。ケイ酸含有リン酸三カルシウム焼結体のペレット上で、骨芽細胞用細胞を培養したところ、ケイ酸を添加しないリン酸三カルシウムに比べ、細胞増殖の抑制効果は認められなかった。ケイ素含有リン酸三カルシウムのペレットをヒトの体液とほぼ等しい無機イオン濃度を有する擬似体液に浸漬したところ、ケイ酸を添加しないリン酸三カルシウムに比べ、表面での水酸アパタイト形成が促進される傾向が見られた。これは、ケイ酸添加によりリン酸三カルシウムの骨結合性が向上する可能性を示す。さらに、ケイ酸含有リン酸三カルシウム粉末の成形体を水熱処理したところ、柱状粒子からなるカルシウム欠損組成の水酸アパタイトも得ることにも成功した。これらの知見は、骨に働きかけ再生を促す吸収性骨修復材料の創製をするにあたり、基礎的な材料合成プロセスの確立と得られた材料の特性評価を行えた点で、非常に有用であったと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、材料合成プロセスの確立およびそのin vitroでの評価を行えた。このまま研究を進めていきたいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
現段階で、材料合成、およびそのin vitroでの評価も行えている。ただし、より高機能な人工骨を目指すために、材料設計についてもさらに検討を続けるとともに、評価も進めたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度は東日本震災の影響で研究の開始が遅れたことと、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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