研究課題/領域番号 |
23760631
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
手塚 慶太郎 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00334079)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 光触媒 / 酸化物 / 鉄 |
研究概要 |
光触媒の研究は酸化チタンを中心とする不対電子を持たない金属酸化物の研究が主流であり,不対電子を持つ遷移金属複合酸化物を用いた研究は活性を示さないとされてほとんど知られていない。本研究では,不対電子を持つ遷移金属複合酸化物の中でも特にd5電子配置である鉄を含む金属複合酸化物に注目した。これらの酸化物に関して,特に,光触媒反応に大きく影響すると予想される電子構造と電子遷移環境に対して,結晶構造および組成の観点から検討を行い,不対電子を持つ遷移金属複合酸化物の光触媒を理解し,新しいタイプの高効率可視光応答光触媒の開発につなげることを目指している。 H23年度は,複数の鉄複合酸化物の主に固相反応法による精密合成に成功した。そして,これらの光触媒活性の評価を行った。メタノールの分解とメチレンブルー分解,酢酸分解反応に関して光触媒活性を調査した。この結果, 酸化物の種類によって活性が大きく異なることを明らかにできた。さらに,反応によっても活性が大きく異なることを見出した。一方で,光触媒活性は助触媒の種類や担持量が活性に大きく関与していることが知られているが,今回,これについても検討を行い,鉄複合酸化物への貴金属の坦持量の最適化にもある程度成功した。 鉄複合酸化物の電子構造については,XPS測定により価電子帯の準位を明らかにし,拡散反射スペクトル測定によりバンドギャップを明らかにすることができた。これに加えて,バンド計算にも成功し,測定結果と計算結果を比較することで,バンドの軌道の帰属もある程度成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は予定通り複数の複合酸化物の精密合成に成功している。光触媒活性の評価に関しては予定していたメタノールに加えて他の反応についても検討を行っている。電子構造については計画通りXPSおよび拡散反射スペクトル測定によって価電子帯の準位とバンドギャップを明らかにするとともにバンド構造計算にも成功している。一方で,光触媒活性の不安定さがまだ問題となっているために,予定していた複合酸化物の絞り込みが十分に行えていない。このような状況から総合的には上記の区分になると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね予定通りであるので,基本的には当初の計画通りに進める予定である。しかし,光触媒の研究者は,評価を電気化学的手法で行う場合が非常に多い。このため,光触媒特性について,これまでのデータと比較するためには,電気化学的手法による測定を行う必要があることを強く感じた。そこで,ポテンショ/ガルバノスタットを購入し,電気化学測定を行い,これまでのデータと比較検討し,新しい知見を得たい。
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次年度の研究費の使用計画 |
光触媒の性能評価のための電気化学測定装置であるポテンショ/ガルバノスタットを今年度の予算と合わせて購入する。これ以外には試薬や学会出張の旅費を計上した。
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