研究課題/領域番号 |
23760633
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
保科 拓也 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80509399)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 強誘電体 / サイズ効果 / 誘電特性 / エアロゾルデポジション法 / 広帯域誘電特性 |
研究概要 |
チタン酸バリウム(BaTiO3)系強誘電体関連物質の誘電特性におけるサイズ効果を解明することが本研究の目的である。本年度は、エアロゾルデポジション(AD)法を用いて粒径24~800nmのBaTiO3ナノ粒子セラミックスを作製した。一般的にAD法で作製した厚膜には非常に大きな応力が働いており、そのままでサイズ効果の議論を行なうことは困難である。そこで、基板上の厚膜を熱処理により剥離し、自立膜の状態で誘電特性の評価を行なった。これにより粒径24nm以上の誘電率の粒径依存性が明らかになった。また、作製したナノ粒子セラミックスの広帯域誘電スペクトルを測定し、結晶構造や微構造の解析結果と比較することによって、サイズ効果に関して次の結論を得た。1)1μm以下では粒径の減少に伴い誘電率は減少するが、これはイオン分極および双極子分極が減少することに起因する、2)イオン分極の減少は結晶格子がハード化すること、双極子分極の減少は90°ドメインの寄与が小さくなることに相当する、3)これらは、粒界で発生する弾性歪の影響として理解することができる。また、純粋なBaTiO3のTiの一部をZrに置換した系についても同様の手法でサイズ効果について検討を行なった。同系ではZrの置換量が増えるとサイズ効果の影響が表れやすくなることがわかった。本結果は、リラクサー強誘電体が通常の強誘電体よりもサイズ効果の影響を受けやすいということを意味する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度目的としていたBaTiO3の(1)ナノ粒子セラミックス自立膜の作製、(2)結晶構造・ドメイン構造の解析、(3)誘電特性における分極メカニズムの解明について、全て計画を達成している。また、次年度に予定していた添加物の効果についても研究を開始しているため、計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
BaTiO3にCa、Zr等を添加してBa、Tiサイトを置換した系についてナノ粒子セラミックスの誘電特性を評価し、サイズ効果を明らかにする。特に、通常の強誘電体、リラクサー強誘電体でサイズ効果がどのように異なるのか系統的に理解する。このために、誘電特性の温度依存性ならびにDCバイアス依存性を測定して、ドメインやPNRのダイナミクスを予測する。一方、純粋なBaTiO3の場合と同様に広帯域誘電スペクトルを測定し、誘電特性に関して分極メカニズムを明らかにする。以上からBaTiO3系セラミックスのサイズ効果を整理・説明する。最終的には、絶縁信頼性、耐還元性、誘電率のAC電界依存性や温度依存性も考慮して、どのような材料系、微構造で次世代のセラミックスコンデンサを設計すべきなのか提案を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
必要な設備は本年度までにほぼ揃ったため、本年度は消耗品、旅費、その他に研究費を使用する予定である。消耗品として、原料粉体、単結晶基板、酸素ガスなどが必要である。旅費は国内・国際学会において4~5回の発表を行なうための成果発表旅費である。その他の経費として、学会参加費、論文投稿料が必要である。
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