現在まで、酸化物半導体をチャネル層に用いた薄膜トランジスタ(TFT)の多くは、nチャネルであり、良好なpチャネル特性を示す薄膜トランジスタは極めて少ない。本研究では良好なpチャネル材料の探索を行い、酸化物半導体から構成されるnチャネルおよびpチャネルTFTを用いたCMOSインバータ回路を実現することを目的に行った。 平成23年度では、TFTのpチャネル材料の探索を行い、多結晶酸化第一錫(SnO)で良好なp-チャネル動作することを確認した。また、SnOチャネル層の作製条件およびデバイス構造を最適化することにより、nチャネルおよびpチャネル動作の両方を示す両極性トランジスタを実現した、多結晶SnOチャネル層は熱処理温度250度で、そのチャネル膜厚を15nmまで極薄膜化することにより大きく特性を改善できることがわかった。作製した両極性トランジスタでは、pチャネル動作で移動度~0.81cm^2(Vs)^<-1>、on/off比>le4、nチャネル動作で移動度~5×10^<-4>cm^2(Vs)^<-1>、on/off比>le2を示した。また、両極性トランジスタを2つ相補形に配置したCMOSインバータ回路を作製し、動作試験を行なった。その結果、正及び負のそれぞれの入力電圧に対してもインバータ動作することが確認され、両極性トランジスタから構成され、電圧利得として約2.5を示すインバータ回路が実現できた。
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