平成24年度においては、AlI3およびInCl3原料を供給するダブルパス供給法のための装置設計及び装置作製を行いAlInN薄膜の成長を試みたが、この方法では全く基板上に薄膜が生成されないことが分かった。この原因としては従来法との原料・キャリアガス・反応ガスの流れの変化による成膜条件の大幅な変化などが挙げられると考えられる。成膜条件として基板加熱温度・基板位置・キャリアガスや反応ガスの流量比等、考え得る限りのパラメータを振ることにより成膜条件の探索を行ったが、基板上には粒子が生成されるのみで薄膜上の結晶成長を促す条件を見出すことは出来なかった。そこで計画を変更し、AlInN薄膜を合成するために従来のInNおよびAlN薄膜成長を行っていた条件に装置を復元した。単純なシングルパス法に戻すのではなく、AlI3とInCl3の原料を混合した原料を用意し、混合比の制御と反応温度の制御によりAlInNの組成制御を行った。得られた薄膜の組成分析・XRD・紫外可視透過率によるバンドギャップ測定から、AlNにInNを0~15%の範囲で固溶させたAlInN薄膜を作製できることを見出した。残念ながら研究期間内にはここまでの成果しか得られていないが、AlInN薄膜を形成する条件を見出したことは、InN柱状結晶上へのAlInNの積層の可能性を示した重要な知見が得られたものと考えられる。また、ダブルパス法によるAlInNでは粉末状の結晶成長が起きたことは、気相中での均一核生成が起きていることを意味しており、この問題を解決するためには従来のホットウォール型ではなくコールドウォール型の反応装置とすることが有効であると期待される。このような問題点とその対応策が見出されたことは本研究が将来的に発展していくために重要な知見が得られたものと考えている。
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