昨年度までに酸化物イオンの優先的な輸送経路を検討したSrFeO3-d混合導電性酸化物を取り上げ、テンプレート粒子成長法による組織配向制御を行った。溶融塩法で作製したSr3Fe2O7-d板状粒子を、トルエン中で、Fe2O3及びSrFeO3-dカ焼粉、アクリル系の結合剤、可塑剤(フタル酸ブチル)とともに混合させることでスラリーを調整した。得られたスラリーを用い、ドクターブレード法にてシート成形し積層後、CIP成形を行い、最終的に1300℃、5 hで焼成し、焼結体を得た。放射光を用いた粉末X線回折により、得られた焼結体はc軸方向に配向していることを確認した。この配向試料の酸素透過速度を、800℃にて、大気/He20-80sccmの酸素分圧差圧下で測定した結果、無配向試料に比べ、配向試料の方が高い値を示すことが分かった。特に大気/He60sccmの酸素分圧差圧下において、配向試料の酸素透過速度は、無配向試料に比べて約3倍高い値を示した。SrFeO3-dでは、高温600℃以上になると、b軸、c軸方向に並んだ酸素サイトの酸化物イオンが欠損しやすいことを明らかにしている。上述のように、c軸方向に配向制御した試料の酸素透過速度が大きいことから、この規則的な酸素欠損サイトを介したb軸あるいはc軸方向の酸化物イオン輸送が容易かつ支配的であると考えている。以上より、異方性を有する混合導電性線化物について、結晶構造に基づいた配向制御を行うことで、酸素透過性能の向上に寄与しうることを示した。
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