研究概要 |
本研究は,第一原理計算を用いてランタンリン酸塩中のプロトン伝導機構を原子レベルで明らかにし,伝導度向上の材料設計指針を獲得することを目的としている.具体的には,オルトリン酸塩 LaPO_4 およびポリリン酸塩 LaP_3O_9 について「結晶内のプロトンサイトの同定」,「サイト間を結ぶ伝導経路探索およびそのポテンシャル障壁の評価」, および 「プロトン伝導に対するドーパントの会合効果」について調査した.その結果,プロトンの長距離伝導に対する活性化エネルギーは,LaPO_4 では全方位に対して 0.7 eV と等方的であるのに対し,LaP_3O_9 では bc 面内で 0.34 eV,a 軸方向で 1.0 eV と大きな異方性があることが明らかとなった.また,プロトンと Sr ドーパントの会合により,プロトン伝導度の見かけの活性化エネルギーが LaPO_4 で 0.1-0.2 eV,LaP_3O_9 では 0.5-0.6 eV 増大することがわかった.したがって, ポリリン酸塩 LaP_3O_9 の方がプロトン伝導体としてのポテンシャルは高く,結晶配向の制御や最適ドーパントの探索を行うことで,実用に供することのできる伝導度を達成する可能性を秘めていることが示唆された.
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