研究課題/領域番号 |
23760640
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大藤 弘明 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (80403864)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 六方晶ダイヤモンド / 高温高圧実験 / 物性測定 / 電子顕微鏡観察 |
研究概要 |
炭素の準安定多形である六方晶ダイヤは,最近の理論計算によって立方晶ダイヤを凌ぐ硬度と弾性特性を持つ可能性が示され,新奇硬質材料としても大きな注目を浴びている.本研究課題は,高温高圧実験によって炭素の準安定多形である六方晶ダイヤモンドの純粋な焼結体を合成,減圧回収し,その物質科学的特性について多面的に評価することを目的とする. 平成23年度は,高結晶性グラファイトを出発物質に用い,マルチアンビル高圧発生装置とダイヤモンドアンビルセルを併用し,それぞれ最高で25 GPa,50 GPaまでの圧力領域において高温高圧実験を行い,回収試料のX線回折や電子顕微鏡を用いた微細組織・構造観察を通して合成物の評価を行った.その結果,六方晶ダイヤの純粋な焼結体合成に必要な温度圧力条件がおおよそ明らかとなった.また,回収試料の電子線回折や高分解能TEM観察の結果,出発物質のグラファイトと相転移後の六方晶ダイヤの間にこれまで報告されているGr[001] // H-dia [100]以外の共軸関係を新たに見出した.両者の結晶構造モデルとこれらの共軸関係から,マルテンサイト様相転移について原子積層レベルで考察することが可能となり,両者間の相転移が基本的にはGr(002)面上でのレイヤーシフトで進行することを明らかにした. 今後,純粋な焼結体を用いた硬度測定や弾性波速度測定などの物性測定を本格的に進める予定で,これまでほとんど未知である六方晶ダイヤの物性を理解する上でも意義深く,社会的注目度も高い.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
六方晶ダイヤモンドの焼結体合成に適した温度圧力条件がほぼ明らかになり,予備的な物性測定を始められるような試料を得るに至っている.合成条件の最適化にもっと時間を費やすであろうと見込んだ当初の計画を上回るペースで研究が進展しているといえる.また,合成試料の高分解能TEM観察によってグラファイトからの相転移メカニズムについても原子積層レベルで考察することができつつあり,極めて順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の実験によってほぼ明らかにされた六方晶ダイヤモンドの単相焼結体合成に適した温度圧力条件に基づき,出発物質の種類や高圧セル構成のさらなる最適化を進める.それにより,硬度測定や弾性波速度測定などの物性試験に適したより高品質な焼結体が得られると期待され,年度後半にはそれらの試料を用いた本格的な物性測定に尽力する.
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次年度の研究費の使用計画 |
高圧合成試料の光学特性の観察・評価のために昨年度購入した反射顕微鏡に取り付ける画像観察用カメラを備品として購入予定である.その他,高圧実験用の出発試料(高結晶性グラファイト)およびセラミクス製セルパーツ,電子顕微鏡用品などの消耗品の購入にも研究費を使用する予定である.また,国内外の学会などにおいて積極的に成果発表を行う予定で,現時点だけでも国際学会(1件),国内学会3件での成果発表を予定しており,それに必要な旅費を支出したい.
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