平成25年度は,前年度に引き続き,マルチアンビル高圧発生装置を用いて,単相バルク体の合成に必要な条件,(前年度に検討した温度圧力条件に加えて)特に加熱保持時間について検討を行った.25GP,1500℃の条件では,加熱保持時間20分の場合,X線回折的にはほぼ六方晶ダイヤモンド単相に近い試料が合成されることを突き止めたが,合成試料は黒色不透明で,また高分解能透過電子顕微鏡観察においても,ナノスケールでわずかにグラファイトの積層を残している部分も認められ,厳密な意味で100%純粋な六方晶ダイヤ単相試料ではないことが明らかとなった.そこで,温度圧力条件はそのままに,保持時間を1時間,3時間,10時間と変化させて,わずかに残留している未反応グラファイトを除去することは可能かどうか検討を行った.結果として,加熱保持1時間,および3時間の試料も黒色を呈し,透過電顕観察の結果,やはり極微量のグラファイトの残留が認めれた.一方,10時間加熱保持の実験回収物では,立方晶ダイヤモンドが生成し始める様子が観察され,厳密に100%純粋な六方晶ダイヤ(準安定多形)を得るのは困難であることが分かった. 一方,合成されたほぼ純粋な六方晶ダイヤの1気圧における高温安定性(耐性)について,窒素およびアルゴン雰囲気下でのアニーリング実験を通して検討を行った.その結果,六方晶ダイヤは,300℃を超えたあたりで徐々にグラファイト化の兆候を示し,立方晶ダイヤに比べて高温耐性が低いことが分かった. また,ほぼ純粋な六方晶ダイヤ試料のヌープ硬度測定試験を行い,部分的に極めて高い硬度値(~160GPa)が得られたものの,全体としては,100-110GPa程度と,立方晶ダイヤのナノ焼結体(130-140GPa)に比べて低いことが分かった.
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