研究課題/領域番号 |
23760643
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
永田 肇 東京理科大学, 理工学部, 講師 (70339117)
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キーワード | 非鉛圧電セラミックス / 積層セラミックアクチュエータ / 圧電特性 |
研究概要 |
標題の(Bi1/2K1/2)TiO3 [BKT]は、キュリー温度Tcが約400oCと比較的高く、圧電定数d33も約100 pC/Nと非鉛系の中では比較的大きいことから、非鉛圧電アクチュエータの候補として注目を集めている。本研究課題では、このBKTセラミックスに着目し、250oC程度まで使用可能な温度補償型・非鉛積層圧電アクチュエータの開発を目指して研究を進めている。平成24年度は、銀-パラジウム電極Ag-Pd(7:3)を内部電極としたBKT積層セラミックスアクチュエータの試作を行い、その電気的諸特性の評価を行った。その結果、1045℃-10 hで焼成したBKT積層アクチュータは、高密度比かつ高抵抗率を持ち、測定した歪みから求めた見かけの圧電定数はd33* = 138 pm/V(@100 kV/cm)を示した。このd33*は単板のBKTセラミックスに近い値を示したことから、良好なBKT積層セラミックアクチュエータが作製できることが明らかとなった。 Bi系非鉛圧電セラミックスの積層化にあたっては、Ni, Cu, Ptといった電極材料は同時焼成中の金属酸化(Ni, Cu)やコスト(Pt)の問題から内部電極には不向きであることが知られている。また、今回研究に用いたパラジウムもBiと反応することが知られており、Bi系材料の積層化(ひいてはBi系非鉛圧電セラミックスの実用化)において内部電極との相性はきわめて重要な課題であった。本研究を通じて、Ag-Pd(7:3)を内部電極に用いて一定の電気的諸特性を示すことが明らかになったことはたいへん重要な知見であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、上述したBKT系非鉛圧電セラミックスを用いて、粒子配向(結晶方位制御)を施した積層セラミックアクチュエータの作製・評価を行うことを目的としている。平成23年度は、BKT系アクチュエータ作製のベースとして、難焼結性といわれるBKTセラミックスの緻密化に取り組むとともに、原料やプロセスの最適化により普通焼成法で高密度BKTセラミックスが作製できることを明らかにした。平成24年度は、粒子配向型積層セラミックアクチュエータの作製までは到達できなかったものの、無配向型BKT積層セラミックアクチュエータを試作するとともに、その電気的諸特性を評価を行い良好な電界誘起費罪特性を示すことを明らかにした。また、当初の実験計画では内部電極として、まずはPt(白金)を用いることを検討していたが、今回はより現実的なAg-Pd(7:3)を用いて検討を行った。その結果としてAg-Pdを用いてBi系ペロブスカイトであるBKTの積層化が可能であることと、良好な電気的諸特性が引き出せることを明らかにしている。この点は当初の予定よりも進んだ研究成果と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き、BKT系セラミックスの圧電歪み定数d33の向上を目指す。具体的には、MnやNbイオン等の添加がソフト化に寄与する影響や、Liイオン等の焼結助剤の置換がBKTセラミックスの焼成温度の低下に及ぼす影響について調査する。これらの焼結性改善やソフト化が粒子配向型BKTセラミックスのd33値の改善に及ぼす影響を明らかにする。また、これらの研究にあたっては、H23年度の研究で得られた出発原料の選定や作製プロセスを積極的に活用する。 また、平成24年度に作製した積層セラミックスアクチュエータについて、内部電極として用いたAg-Pd(銀パラジウム)との反応や拡散について詳細な分析を行う。さらに、H25年度は、BKT系セラミックスを用いて粒子配向型の積層セラミックスアクチュエータの試作に取り組む。本研究では、内部電極としてまずはPt(白金)またはAg-Pd(銀パラジウム)を用いる。また、積層化に用いるシート成形プロセスにReactive Templated Grain Growth(RTGG)法を組み合わせることにより、粒子配向型BKT積層アクチュエータの試作を行う。このような粒子配向型積層アクチュエータの作製は他に例を見ないため、作製プロセスにおける課題の抽出やそれらの解決策について明らかにしてゆく。また、得られた積層アクチュエータの誘電的・強誘電的・圧電的特性を明らかにする。特に、アクチュエータとして重要な電界誘起歪み特性を中心に明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、セラミックス作製・評価・デバイス試作までの領域を一貫して実施するため、多くの消耗品が必要となる。非鉛圧電セラミックスの作製では、原材料費のみならず、シート成形プロセスなどの作製プロセス全般に係る経費が必要となる。また、アクチュエータの試作に当たっては、電極材料や材料の加工・工作に多くの予算を割く必要がある。従って、H25年度も多くの予算を消耗品費用に当てて使用することを計画している。 また、H25年度は実施3年目となるため、これまでに得られた成果について、国内・海外での研究成果発表を予定しており、これまで以上の旅費が必要となる。併せて論文投稿などにより成果発表を行うため英文校閲等の謝金も必要となる。その他、研究の進捗状況に合わせて学生アルバイトを雇用することを予定している。
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