研究課題
磁性材料を癌腫瘍患部に堆積させ交流磁場により発熱焼灼する「交流磁場焼灼法」の実用化のため、高い発熱能力を有する磁性材料の開発が求められている。特に、球状化された発熱磁性材料は、腫瘍部へ続く血管を塞栓させ、加熱治療の効果に加え塞栓療法の効果も期待できる。本研究の最終年度には、すでに球状粒子化に成功したガーネット型フェライトの発熱能力を向上させる手掛かりとして、異なる結晶構造を持つフェライト粒子の作製とビーズミル粉砕による微粒子化を行い、交流磁場中での発熱メカニズムを探った。得られた知見について、以下に記す。1、Y3Fe5O12へのGd置換は発熱能力を著しく向上させること。置換型Y1.5Gd1.5Fe5O12は立方晶と斜方晶の混合相を示すが、高温焼成により立方晶の単相へと相変化がおこる。このときに最大の発熱能力を有することが分かった。2、結晶相の変化は発熱能力を向上させること。1、のような相変化が発熱能力に影響を与える材料として、新たにMg1-XCuXFe2O4系フェライトを発見した。相変化に伴う結晶歪はヒステリシス損失を増大させ、磁性材料の発熱能力を著しく向上させることを見いだした。3、微粒子材料の発熱能力には、ヒステリシス損失とネール緩和が強く影響を及ぼすこと。今回作製した全てのフェライト粒子は、結晶子径10数ナノメートル程度まで微粒子化することで、発熱能力が向上することを確認した。これは、単磁区粒子の形成に伴うヒステリシス損失の増大と、ネール緩和による発熱であることを見いだした。以上のように、本研究の目的である球状磁性材料の開発について、研究実施計画に沿って遂行することができ、さらに発熱メカニズム解明の手掛かりとなるネール緩和・ヒステリシス損失について、多くの知見が得られた。結晶歪みを導入したフェライト微粒子は、交流磁場焼灼法の実用化を進展させると期待できる。
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