これまでに合成に成功している多結晶SiCナノチューブについて、原子力機構 高崎量子応用研究所TIARA照射施設にて、照射温度、イオン種、照射量を変化させ、系統的にイオン照射を行った。その後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、微細組織変化を観察した結果、900℃におけるイオン照射では、単結晶SiCナノチューブが、200℃以下におけるイオン照射では、アモルファスSiCナノチューブがそれぞれ合成できることを見出した。さらに、200℃以下のイオン照射において、照射量を最適化することにより、数nmから十数nm程度の大きさのSiC微結晶が残存した微結晶SiCナノチューブの合成にも成功した。さらに、200℃以下のイオン照射において、イオン種をNi、Zr、Auと変化させ、多結晶SiCナノチューブに照射した結果、原子番号が大きいイオンで照射した場合、原子番号が小さいイオンで照射した場合に比べて、小さな照射量で、多結晶SiCナノチューブからアモルファスSiCナノチューブへ変化することを明らかにした。また、これまでに確立している多結晶SiCナノチューブからの微結晶及びアモルファスSiCナノチューブの合成条件により、多結晶SiCナノチューブの前面に、TEM用マイクログリッドを設置して、イオン照射を行った。その結果、一本のナノチューブ内に、多結晶と微結晶、及び、多結晶とアモルファス相が、それぞれ混在している二種類のヘテロ構造SiCナノチューブ(多結晶-微結晶SiCナノチューブ及び多結晶-アモルファスSiCナノチューブ)の合成にも成功した。
|