本研究では,天然繊維強化複合材料(GC)に関して,1本の麻撚り糸を埋め込んだ単撚糸埋込複合材料から,複数本の麻撚り糸から構成される一方向強化複合材料までのGC材料について引張特性を明らかにして,その引張特性の発現機構の解明を行うことを目的とした. 平成23年度までに,単撚糸埋込複合材料についてのその場観察用引張試験システムの設計・製作を行った.このシステムを用いて,天然繊維と比べ数分の1の直径を有する炭素繊維を埋め込んだ単糸埋込複合材料を試作し,引張試験中のその場観察を行った.その結果,初年度の目標である偏光顕微鏡を用いたその場観察用引張試験システムを構築した. 平成24年度は,天然繊維の撚りの影響を明らかにするため,撚りのみに着目して,炭素繊維を撚糸にした単撚糸炭素繊維埋込複合材料の引張負荷下におけるその場観察を行った.これにより,撚りが繊維の破壊や繊維-樹脂界面のはく離に及ぼす影響を明らかにした.また,単撚糸複合材料のモデル化を行って,有限要素法による応力場解析を行い,撚りが界面のはく離を助長し,見かけの応力回復長さを増加させるために,繊維自体の破断を抑制することを明らかにした. 平成25年度は,撚り数の異なる天然繊維撚糸を用いて,撚糸を埋め込んだ単撚糸埋込複合材料を作成し,引張負荷下におけるその場観察を行ったが,数十本からなる撚糸の破断に要する荷重は相対的に大きいので,樹脂の破壊も発生し同一撚糸中での多重破断挙動は観察できなかった.そこで,3本の単糸からなる小規模の麻撚糸埋込複合材料を作成し,引張負荷下での多重破断挙動を観察した.その結果,天然撚糸の破断挙動は,1つの単糸の破断により周辺の単糸の破断を誘発することや,撚糸のはく離挙動,破断撚糸の応力回復挙動を明らかにすることができた.また,複数本撚糸の複合材料を作成し,引張特性に及ぼす撚り数の依存性も明らかにした.
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