研究課題/領域番号 |
23760652
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研究機関 | 福島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山内 紀子 福島工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (20598106)
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キーワード | 微粒子 / 液相合成 / 磁性粒子 / ポリマー粒子 / 複合粒子 / 機能性ナノ材料 / 単分散粒子 |
研究概要 |
磁性ナノ粒子をポリマー粒子に内包した磁性ポリマー複合粒子は、外部磁場応答性をもつことから、タンパク質やDNA、ウィルスなどを分離・分析するための担体としての応用が見込まれている。さらに、高精度定量分析に向けた応用では、磁場に応答するだけでなく、個々の複合粒子が均一に磁場に応答できることも求められている。 本研究では、磁性ナノ粒子として粒径10nm程度のマグネタイト(Fe3O4)粒子を用いている。マグネタイト粒子は、その表面にヒドロキシ基を持つため、水との親和性が高い一方で、ポリマー粒子中に包含するためには表面に疎水性の官能基を付与する必要がある。さらに、ポリマー粒子に内包させる過程において、個々のマグネタイト粒子を溶媒あるいはモノマー中で良好に分散させておく必要があり、その方策として、シランカップリング剤によるマグネタイト粒子の表面修飾を検討した。シランカップリング剤は、アルコキシ基の加水分解、続いてマグネタイト粒子表面にあるヒドロキシ基との脱水縮合によって粒子表面へ付与されるが、加水分解および脱水縮合反応を促進するために、塩基性触媒が用いられることが多い。塩基性触媒としては、一般的にはアンモニアが用いられるが、本研究ではルイス塩基であるジエチルアミンを用いた。ジエチルアミン中におけるシランカップリング反応により、マグネタイト粒子表面にフェニル基、ヘキシル基、メタクリロキシ基などの種々の官能基を導入でき、これらの表面修飾マグネタイト粒子はトルエンなどの有機溶媒への分散性が極めて高いことがわかった。今後は、これらのマグネタイト粒子を用いて磁性ポリマー複合粒子を作製し、さらに、複合粒子表面に糖鎖などの機能性物質を導入することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁性ポリマー複合粒子の合成法としては、予め作製したポリマー粒子表面に磁性ナノ粒子を付与する手法が主流であるが、この手法では、磁性ナノ粒子が存在するのはポリマー粒子表面のみであり、ナノ粒子含有量の高い複合粒子は期待できない。また粒子表面の磁性ナノ粒子が脱離する可能性もある。一方、磁性ナノ粒子共存下でポリマー粒子を重合する手法では、磁性ナノ粒子はポリマー粒子内部に取り込まれ、ナノ粒子含有率の高い複合粒子の作製が期待できる。 ここで、ポリマー粒子重合中に磁性ナノ粒子を取り込ませるには、溶媒およびモノマー中において分散安定な磁性ナノ粒子の作製が必須である。溶媒およびモノマー中への分散のためには、ナノ粒子の表面に疎水性官能基を導入する方法が知られているが、本研究ではトルエンのような無極性溶媒中においても分散安定性が良好な磁性ナノ粒子の作製に成功した。さらに、この表面修飾の手法をシリカナノ粒子などにも適用できることがわかり、磁性ナノ粒子以外の機能性ナノ粒子を内包したポリマー粒子合成へ応用できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
磁性ポリマー複合粒子の作製法として、はじめに分散重合を検討する。分散重合では、磁性ナノ粒子を分散させた溶媒に、モノマー、重合開始剤、分散安定化剤を加えて重合を行う。各試薬の濃度、種類、溶媒の組成などを検討して、大きさの揃った(単分散)ポリマー粒子中に磁性ナノ粒子を包含することを目指す。さらに、重合途中での磁性ナノ粒子溶液の追添加により、磁性ナノ粒子含有量を高めることを検討する。また、複合粒子を高精度定量分析へ応用するためには、個々の複合粒子が均一に応答できる磁場応答均一性も求められるため、磁性粒子の追添加速度や撹拌条件なども詳細に検討する予定である。いずれにおいても、有機溶媒中における分散性が非常に高い磁性ナノ粒子を用いるので、ナノ粒子濃度を高くした際にも、安定した重合の進行が期待できる。 複合粒子を作製できた後は、複合粒子表面への糖鎖などの機能性物質の導入を検討する。磁性ナノ粒子を内包することによって得られる外部磁場応答性とともに、糖鎖によってウィルスやタンパク質などを強く認識・接着可能という特性を有した多機能性ポリマー粒子を作製し、種々の分離・分析操作に応用できることを示す。 さらに、磁性ナノ粒子およびシリカナノ粒子による検討の知見を踏まえて、本重合系における機能性ナノ粒子の最適条件を導く。その後、誘電体であるチタニア粒子や蛍光体であるCdSe粒子などをポリマー粒子中に包含することを検討予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
磁性ポリマー複合粒子の観察のために、実体顕微鏡(本体、LED照明装置、顕微鏡デジタルシステムなど)を購入する。また、今年度に引き続き、生成粒子の分析および評価を行う必要があり、学内外の共通機器の利用を考えている。そのため、共通機器などで使用するセルなどを本研究専用に購入し、粒径分布測定、電子顕微鏡による粒子観察、示差熱重量分析測定、X線構造回折などを実施する。 試薬類としては、マグネタイト粒子作製のための2価および3価の塩化鉄、マグネタイト粒子の表面処理剤である種々のシランカップリング剤、表面処理の際の塩基性触媒かつ溶媒となるジエチルアミン等を用意する。さらに、モノマー、重合開始剤、種々の安定化剤などを購入する。 また、東北大学大学院工学研究科へ赴き、研究に関する情報収集およびディスカッションを積極的に行うための出張費に充てる。できる限り当研究室の学生とともに出張し、研究をさらに円滑に進める予定である。その他、所属学会の年会費や学会参加費などに本研究費を使用する。
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