研究課題/領域番号 |
23760658
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
李 海文 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 准教授 (40400410)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 水素貯蔵 / 水素 / 錯体水素化物 / 中間相 |
研究概要 |
今年度では、高密度水素を含有するホウ素系錯体水素化物M(BH4)n (M = Mg, Ca等)を合成して、水素放出・再吸蔵反応の挙動およびそれに伴う中間相の生成を検討した。Mg(BH4)2はMgCl2とNaBH4とモル比1:2での液相化学合成、あるいはMgB2の水素雰囲気中でのメカニカルアロイング処理により合成された。得られた水素化物は約500Kから水素放出反応が開始し、中間相の生成を伴う多段反応により約14質量%もの水素が放出された。さらに、真空下での等温水素放出過程において、[B2H6]2-、[B5H9]2- or [B5H8]-の生成も核磁気共鳴分析の結果から示唆された。すなわち、多原子陰イオン[BHx]n-が少しずつ縮合して、より大きな[B2H6]2-、[B5H9]2- or [B5H8]-の生成を経て、最終的に大きな[B12H12]2-が生成されると考えられる。このような複雑な多原子陰イオンの生成過程はMg(BH4)2における高い水素放出温度および遅い水素放出速度の要因の一つとして考えられる。また、複合系LiBH4 + 1/2MgH2においても、水素放出過程の水素圧依存性の結果から、1MPa以下の水素圧では昇温過程において中間相Li2B12H12の生成が確認された。以上のことから、多原子陰イオンの生成過程およびその制御がホウ素系錯体水素化物における今後の重要な研究課題であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
真空下でのMg(BH4)2の等温水素放出過程において、[B2H6]2-、[B5H9]2- or [B5H8]-および[B12H12]2-の生成が核磁気共鳴分析の結果から示唆された。このことから、多原子陰イオン[BHx]n-が少しずつ縮合して、より大きな[B2H6]2-、[B5H9]2- or [B5H8]-の生成を経て、最終的に大きな[B12H12]2-が生成するという複雑な反応過程はMg(BH4)2における高い水素放出温度および遅い水素放出速度の要因の一つとして考えられる。また、複合系LiBH4 + 1/2MgH2においても、水素放出過程の水素圧依存性の結果から、1MPa以下の水素圧では昇温過程において中間相Li2B12H12の生成が確認された。上記の研究成果から今後の研究開発において重要な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ホウ素系錯体水素化物の水素放出・再吸蔵反応過程における化学結合状態の変化をin-situレーザーラマン分光分析(現有設備)によりさらに詳しく評価する。また、循環純化型アルゴングローブボックス(現有設備)内部で有機溶媒を用いて、良好な反応特性を示すホウ素系錯体水素化物をナノポーラス材料中に充填し、ナノ構造の制限により水素放出・再吸蔵反応における中間相の生成に対する影響を解明するとともに、M(BH4)nに適するナノポーラス材料を選出する。上記のように、ナノ構造の制限によって、反応過程に生成する[BxHy]m-のサイズを制御し、水素放出・再吸蔵反応の特性を向上させるとともに、[BxHy]m-のサイズの制御に基づいた材料設計の指針を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、試料合成から分析まで使用される基本的な研究設備に関して、応募者が所属する研究室に完備しているので、研究経費を消耗品費と旅費として使う。消耗品費に関しては、出発原料のLiBH4や塩化物などの高純度試薬、高規則性ナノポーラス材料、循環純化型グローブボックス用手袋や試料作製・測定用高純度ガスなどを購入するために使う。旅費に関しては、研究打合せ、日本金属学会や国際会議での情報収集や成果報告のために使う。
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