光エネルギーの利用によるリチウムイオン二次電池の高性能化を目指し、モデル電極としてチタン酸化物の薄膜を作製し紫外線照射下における電気化学的リチウム挿入脱離反応の評価を行った。チタン酸化物のみからなる薄膜を得るべく、酸化チタンナノ粒子ペーストの焼き付けによって酸化チタンナノ粒子多孔質薄膜を、チタン酸ナノシートの泳動電着によってチタン酸ナノシート積層薄膜を得た。作製したチタン酸ナノシート積層薄膜、酸化チタンナノ粒子多孔質薄膜ともに電気化学的リチウム挿入反応(還元反応)時に紫外線を照射しても反応やそれに伴う容量に変化は見られなかった。一方で電気化学的リチウム脱離反応(酸化反応)時にはどちらも容量の増加が見られた。酸化チタンナノ粒子多孔質薄膜では酸化反応終端部付近においてのみ紫外線照射によって反応抵抗が小さくなった。酸化チタン本来の電子伝導性が小さい酸化反応終端部付近において光伝導性によって電子伝導性が向上し、分極が抑制されたためであると予想される。チタン酸ナノシート積層薄膜では酸化反応の初期~終端部を問わず紫外線照射によって酸化容量の増加が観察された。また実際に紫外線照射下の方がより高い酸化数までチタンが酸化されることを確認した。この現象にともなう電気化学的な反応の抵抗は変化しなかった。こういった結果からチタン酸ナノシート積層薄膜では電気化学的なリチウムの脱離反応と協奏的に、光照射による不可逆な光電気化学的リチウムの脱離反応が起こっていることを明らかにした。またこの光電気化学反応は表面反応に律速されていることを確認した。このように本研究では、酸化チタンにおいて紫外線照射下でリチウム電池電極特性が変化するという新奇な現象を観察するとともに、それが高性能化しうることを示した。
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