研究課題/領域番号 |
23760663
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
植松 英之 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80536201)
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キーワード | 国際情報交換 / 多成分材料 / レオロジー |
研究概要 |
本研究では、高分子マトリクスの相分離と粘弾性が無機材料の分散性に及ぼす影響について明確にし、相分離と粘弾性を利用した熱刺激応答材料の設計指針を得ることが目標である。初年度となる平成23年度ではマトリクスの相溶性がシリカ粒子の分散性に及ぼす影響を検討した。平成24年度では、マトリクスの粘弾性が無機材料の分散性に及ぼす影響について検討した。 電子デバイスで用いられる接着剤となる材料を用いて検討した。具体的に、高分子量体のアクリル高分子(AP)、と低分子量体となるエポキシ(EP)(低分子エポキシ(L-epo)、オリゴマーエポキシ(H-epo)、硬化剤(CA)のブレンド物)、無機のシリカ粒子(Si)の5成分を用いて材料を調整した。初年度の検討結果より、AP/L-epo系及びAP/CA、AP/H-epo系はそれぞれ相溶系、非相溶系であることがわかっており、今回は、AP/EPの中にSiが分散している材料のレオロジーから熱刺激応答性を検討した。AP/EPが粘性体に近い状態では、Siの分散状態が良分散に近い状態から温度上昇によってSiのネットワーク構造が形成される。一方、AP/EPが粘弾性体の場合は、Siの分散状態は悪くAP/EP中で凝集し、温度上昇によって分散状態が変化しないことが確認された。また、初年度の成果より、EP中にあるH-epoがSiを橋渡す役割となり、Siのネットワーク構造が形成されることが示唆されていることから、Siの分散構造は試料を作成する際の材料のレオロジーに依存し、Siが良分散系に近い状態で且つSiが拡散しやすい場合、熱刺激応答材料として振舞うことが示唆された。以上のことから、申請当初の計画・目標通り、マトリクスの粘弾性を利用することでSiの分散制御と熱応答性が制御できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた内容について検討し、目標とする熱刺激応答材料の設計指針となりえる結果が示されているため、目標していたことがほぼ達成できたと判断できる(達成度80%)。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(23年度)に行ったマトリクスの相溶性と、昨年度(24年度)に行ったマトリクスの粘弾性が熱刺激応答性に及ぼす影響から、通常の高分子/無機粒子分散系と異なるレオロジーを示すことが確認されている。すなわち、成形加工性を制御するための新たな材料設計指針へとつながるため、熱刺激応答材料のレオロジー制御について検討を行う。具体的には、成形加工性を考える上で基本的なせん断場、伸長場でのレオロジーについて検討する。また、熱刺激応答性の発現メカニズムを検証するために、汎用性の高い材料を用いて、熱刺激応答材料の設計指針を確立することを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
目標を達成するために、レオロジー評価をするための機器を借用するための費用が必要となる可能性がある。また、汎用材料を用いた実験を行う予定であるため、材料費等の実験に必要な消耗品を購入しながら研究を進める。 また、これまでに得た結果を学会、論文等を通じて発信し情報交換を行うとともに、検討内容及び結果への解釈へフィードバックさせながら研究を遂行する。
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