研究課題/領域番号 |
23760665
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡本 範彦 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60505692)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 熱電変換材料 / 異相界面 / 単結晶 / 格子熱伝導率 / フォノン散乱 / 透過電子顕微鏡 |
研究概要 |
クラスレート化合物等の包接化合物は,ケージ状骨格構造が異種ゲスト原子を内包した結晶構造を有する.ケージ構造と弱く結合しているゲスト原子は局在振動しており,その局在フォノンのエネルギー準位はゲスト原子の種類に依存する.ゲスト原子の異なる異種クラスクレート化合物界面では,局在フォノンのエネルギー準位のずれによりフォノン伝播が阻害されるため格子熱伝導は下がると考えられる.一方で,ケージ構造の整合性を保てば,異相界面は電気特性に影響を与えないと考えられる.本研究では,局在フォノンミスマッチによる界面熱伝導率の低減効果を検証し,それを利用することにより二相組織を有する包接化合物の熱電変換特性を向上させることを目的とした.アーク溶解により作製したBa8Ga16Ge30/Sr8Ga16Ge30二相組織クラスレート化合物をEBSDにより解析すると,隣接するBaおよびSrクラスレート化合物の結晶方位が揃っていることがわかった.(BaXSr1-X)8Ga16Ge30 (X=0.25, 0.50, 0.75)の初期組成でチョクラルスキー法による単結晶化を行ったものの,アーク溶解材のような均質で微細な組織ではなく,成長初期にはBa-rich,後期にはSr-richの,粗い組織の多結晶材しか得られなかった.そのため,各化合物単結晶から拡散接合による双結晶作製を試みた.各クラスレート単結晶薄板を種々の温度および圧縮応力下において,ある結晶方位関係を持たせて拡散接合させたが,接合面全面に渡り隙間なく拡散接合することは不可能であった.代替方法として,両化合物の融点差が約200℃もあることを利用して,Ba8Ga16Ge30単結晶上にSr8Ga16Ge30多結晶を置き,Srクラスレートを一度溶解させた後,徐冷することにより,Srクラスレートをヘテロエピタキシャル成長させることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り,初年度にBaおよびSrクラスレート化合物の双結晶を作製することに成功している.チョクラルスキー法にように,均質な複相単結晶を得ることはできなかったものの,代替方法として,Baクラスレート単結晶上でのSrクラスレートのエピタキシャル成長に成功し,異相界面垂直方向の熱伝導率を測定するのに充分な大きさの双結晶を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
得られたBa/Srクラスレート双結晶の界面の原子構造を高分解能透過電子顕微鏡により観察し,異相界面のラフネス(ゲスト原子種の変化の急峻さ)およびケージ構造の整合性を確認する.その後,界面垂直方向の熱伝導率および電気抵抗率を測定することにより格子熱伝導率を見積もり,各クラスレート化合物単結晶の格子熱伝導と比較し,本研究の仮説である局在フォノンミスマッチのある界面での格子熱伝導率の低減効果を調べる.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に必要な設備備品は揃っているので,今後,試料作製のための消耗品および電子顕微鏡用フィルムなどを中心に使用していく予定である.また,得られた成果を学術会議などで研究発表する際の旅費などにも使用する予定である.
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