研究課題
クラスレート化合物等の包接化合物は,ケージ状骨格構造が異種ゲスト原子を内包した結晶構造を有する.ケージ構造と弱く結合しているゲスト原子は局在振動しており,その局在フォノンのエネルギー準位はゲスト原子の種類に依存する.ゲスト原子の異なる異種クラスクレート化合物界面では,局在フォノンのエネルギー準位のずれによりフォノン伝播が阻害されるため格子熱伝導は下がると考えられる.一方で,ケージ構造の整合性を保てば,異相界面は電気特性に影響を与えないと考えられる.本研究では,局在フォノンミスマッチによる界面熱伝導率の低減効果を検証し,それを利用することにより二相組織を有する包接化合物の熱電変換特性を向上させることを目的とした.チョクラルスキー法により育成したBa8Ga16Ge30単結晶を(001)面に平行に切り鏡面研磨を行い,その上にSr8Ga16Ge30多結晶を置き透明石英管内に真空封入した.Srクラスレートを一度溶解させた後,徐冷することにより,Baクラスレート上にSrクラスレートをヘテロエピタキシャル成長し双結晶を得た.両相の結晶方位関係はEBSDおよびTEM電子回折により確認し,界面転位は存在しなかった.HAADF-STEM 観察により界面においてケージ構造は連続していることがわかったものの,EDX分析により界面での組成変化は急峻ではなくSrクラスレート側において10ミクロン程度の幅にわたってBaが固溶していることが確認された.この双結晶について定常法による熱伝導率測定を行った結果,各クラスレート化合物の熱伝導率から求めた合成熱伝導率よりも高いことがわかった.これはSrクラスレート側にBaが固溶したことにより,界面両側のフォノン状態密度の差が小さくなり,界面フォノン散乱効果が弱くなったためだと考えられる.組成変化の急峻な界面では,界面フォノン散乱効果が観測されると考えられる.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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10.1002/chem.201102939