研究課題/領域番号 |
23760670
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石松 直樹 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70343291)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 金属水素化物 / X線吸収 |
研究概要 |
アーク溶解によってPd金属およびPdの隣接元素であるRhまたはAgを加えた合金を作製し,それらの水素化作業を進めた.RhまたはAgが25 at.%までの水素化試料の作製に成功し,15 at.%までではRhが多いほど水素の含有量が多いことが分かった.しかしRhが15 at.%以上となった場合,水素化が全く進行しないことも新たに分かった.これらの試料について,L2,3吸収端XASを広島大学の放射光施設HiSORで測定し,水素化前後のd軌道の電子状態を調べた.Pd金属の場合,水素化後にwhite-lineと呼ばれる吸収プロファイルが減少し,また,white-lineより高エネルギー側に新たなピークが出現した.前者は4dバンドの非占有状態密度が減少することを示し,後者は水素との反結合準位の形成を示唆する.また,最近の測定によってAgとRhを混ぜた合金試料についてPd金属と異なるスペクトルが観測されており,現在解析中である.平成23年度の後半には,これらの実験結果を成果の一つとして学会・研究会等で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度はアーク溶解によってPd金属,およびRhまたはAgを加えた合金試料を作製し,それらの水素化を順調に進められた.また,RhまたはAgの濃度と水素濃度との関係は,d電子数と水素化物の安定性との相関とみなせると期待できる.HiSORで進めたL3吸収端XAS測定では,Pd金属の場合,期待されたスペクトル形状の変化が観測された.一方,AgとRhについては予測とは異なるスペクトルが観測に成功しており,この結果からd電子数と水素化物の安定性との相関,水素化物が安定なPdと不安定なAgとRhの電子状態の相異を解明できると期待される.以上のように概ね順調に新たな実験結果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
Pdと異なるAgとRhのXASスペクトルの原因解明のために,多重散乱理論を用いた計算コード(FEFF)によるXASのシミュレーションを進める.また研究を3d遷移金属に拡張するために,Pd-Fe,Pd-Ni合金等を作製し,これらの水素化を試みる.得られた水素化試料についてHiSORのBL-14においてL吸収端XASを測定し,Feのd電子状態に対する水素の効果を調べる.この結果をPdの結果と比較する.さらに,ダイヤモンドアンビルセルを用いて高圧下で水素化させたGdFeラーベス相化合物の磁気円二色性測定を実施する.SPring-8のBL39XUを利用する.FeとGdサイトの磁性の相互作用と水素化の影響を求める.京都で行われる金属水素化物の国際会議MH2012や物理学会等に参加し,積極的な成果公開を進める.得られた結果の論文執筆を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
水素化セルの改良機を製作し,水素化とその場でのX線回折測定を円滑な作業としたい.Pd等の金属材料を購入する.GdFeラーベス相化合物の磁気円二色性測定のビームタイム使用料に用いる.金属水素化物の国際会議MH2012や物理学会等の参加費に用いる.
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