研究課題/領域番号 |
23760674
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
橋本 綾子 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (30327689)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 透過型電子顕微鏡 / その場観察 / 光エネルギー変換材料 / 観察環境制御 / 試料ホルダー |
研究概要 |
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察では、通常、真空中で試料の構造や動的挙動を見ることとなるが、多くの材料は、気相や液相中で使用されている。そこで、本研究では、光触媒などの光エネルギー変換材料をターゲットにし、気相中で、光を照射させた状態でのその場観察を目指す。今年度は、TEM内に気相雰囲気、光照射環境を形成させる環境制御TEM試料ホルダーシステムを開発した。TEMの観察環境を制御する方法はいくつかあるが、ここではTEM試料ホルダーを利用する方法を採用した。使用ホルダーは、TEM本体とは独立しているため、開発や改良が容易に行える利点を持つ。 本研究では、試料ホルダーに光ファイバーを内蔵させ、光源に接続させれば、光を試料近傍に照射させることができるようにした。また、ガスタンク、ノズルも試料ホルダーに取り付け、ガスを試料近傍に吹き付けること(雰囲気制御)ができるようにした。この方式は高い圧力雰囲気の形成は難しいが、隔壁方式のように隔壁による像質の低下の心配がない。ガス吹きつけについては、圧力測定など開発途中であるが、光照射については照射量を測定し、太陽光と同程度の光が照射できていることを確認した。さらに、実際にTEM本体に挿入し、光エネルギー変換材料の光照射下のその場観察を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、ベースとなるTEM試料ホルダーを製作し、動作確認を行う予定であった。しかし、新規TEMの立ち上げがあり、それに関わる作業に時間を取られ、全体的に本研究の進み具合はやや遅れた。 光照射機能については、ほぼ予定通りに開発・製作が終わった。照射量も、計画通りに、太陽光と同程度であったので、現在は、太陽電池や光触媒材料のその場を行っている。 ガス吹きつけについては、現在、TEM本体周辺へのガス供給ユニットの設置や圧力測定部の開発を行っている。局所的な圧力測定のため、フィラメントの改良などで難航している。また、TEM本体に挿入する前の予備チャンバーの製作も行ったので、現在は、この予備チャンバーを用い、動作チェックを行っている。今後、予備チャンバーでの圧力測定などを行い、TEM本体に挿入し、その場観察を行っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
開発した環境制御TEM試料ホルダーシステムを利用して、作動環境下に近い状態で光エネルギー変換材料のその場観察や分析を行うことを目指す。平成23年度は、システムのベースとなる試料ホルダーを開発・製作した。そして、現在、予備チャンバーを用いて、システム、特にガス吹き付け機構の動作確認を行っている。確認が終わり次第、TEM本体に挿入し、その場観察を行う。酸素ガスや窒素ガスなど雰囲気の種類や圧力、光照射量を変化させながら観察することで、光エネルギー変換材料の各因子の影響を調べる。 また、材料の構造を詳細に調べるには、高分解能観察が必要で、そのためにはTEM試料作製工程も重要になる。イオンシニング法や集束イオンビーム法などのいくつかのTEM試料作製方法を試す。さらに、加熱などにより清浄面を出す工程も必要であると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在、環境制御TEM試料ホルダーシステムの動作確認を行っているが、その結果に合わせて、さらなる改良を行う予定である。平成23年度は、ベースの試料ホルダーを利用して改良を行ったが、今年度は、大幅な改良をせざるを得なくなることも予想される。 また、実際の光エネルギー変換材料の観察を行うに当たって、試料準備が必要となってくる。既存のTEM試料作製装置を利用する予定ではあるが、その消耗品は購入しなければならない。また、昨年度までは、共用の実験スペースを利用していたが、今年度は、本研究の実験のための専用実験スペースの整備も行いたいと考えている。試料の前準備、TEM試料作製、保管をするための器具や備品も用意する予定である。
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