資源制約の無い次世代の光触媒材料として期待されるグラファイト状窒化炭素(g-C_3N_4)の高活性化を研究した。始めに、アルカリ水熱処理による g-C_3N_4 の比表面積増大手法について、その機構を解明した。光触媒作用を有する g-C_3N_4 は完全な窒化炭素(C_3N_4)ではなく、メレム(C_6H_6N_<10>)ユニットの3つのアミノ基の内の 2 つを利用して連結した一次元ポリマーの積層物であることが確認された。水熱処理により連結アミノ基が加水分解されて g-C_3N_4 の一部が溶解し、溶解しにくい部位が再積層して比表面積の大きな多孔質粒子を形成した。さらに高比表面積の g-C_3N_4 を合成する試みとして、g-C_3N_4 の前駆体であるメラミンに酸素原子を含む尿素等を配合し、欠陥を導入する手法を検討した。尿素の配合比を増大させると 550℃で焼成後の窒化炭素の比表面積は増大したが、水熱処理を加えると比表面積は減少した。g-C_3N_4 内部に尿素に起因する欠陥が導入されなかったためと推察された。光触媒反応機構の解明では、ラジカル生成量の解析、耐久性の解析、活性点の推定を行った。可視光照射により電子スピン共鳴スペクトル(ESR)の g=2.004 のシグナルが増大し、炭素の2p 軌道で構成される伝導帯に電子が励起され、光触媒反応が開始すると推察された。一酸化窒素の光触媒酸化反応の解析により、窒化炭素の自己酸化分解が確認されたが、光触媒活性は低下せず、活性点は反応により減少しないことが確認された。ポリマー末端のメレムユニットに1つのシアノ基が結合した構造を有する g-C_3N_4 が高い活性を示し、光触媒活性点との関係が示唆された。アルカリ水熱処理を過度に行うと比表面積当たりの活性が低下し、活性に関与する構造(末端シアノ基など)が分解されたと推察された。
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