本研究課題では、Pt単原子粒子の析出および析出粒子間の距離を制御する新規電極触媒材料の調製法の確立を目指して実験を行った。これは、電極触媒の未踏領域である。本手法は、Ti原子サイトを電極基板材料に組み込み、Ptの析出サイトを制御した上で、Ptめっきを行うというコンセプトに基づき実施した。Ptを単原子粒子として析出させ、かつ析出粒子間の距離を制御し、電気化学的に評価することで、原子・分子レベルで電極表面を解明することができる。これは、高活性を有する電極触媒設計のおおきな手かがりとなる。 平成23年度の実績としては、電極基板上にTi原子を含有したシリカ薄膜を作製し、その上にめっきによってPt粒子を担持することに成功した。めっきする電位を変えることで、作製したPt粒子のサイズはSEM測定可能なサイズからSEMでは観察できないサイズまで、それぞれ作製することができた。また、別のアプローチとして、Ti原子含有のシリカ粒子を作製し、Pt光還元法により微少量Pt粒子の担持に成功した。このPt粒子は、高分解能TEMによりシングルナノサイズの粒子になっていることを確認した。 平成24年度の実績としては、Ti原子含有のシリカ粒子上に光還元法により微少量Pt粒子の担持した触媒のPtの担持量は従来の50 wt%よりも非常に低い0.6 wt%であることがわかった。しかしながら、水素酸化反応の質量活性は、従来のPt/Cと比較すると約25倍も高い電流密度になっていた。一方、電極基板上にTi原子を含有したシリカ薄膜を用いて、Ptめっき電位やTi原子量を変化させることで、Pt粒子サイズや粒子間距離の制御を試みたが、触媒活性には大きな変化は観測されなかった。電子移動反応により、今回得られたPt粒子はナノサイズレベルのクラスターになっており、通常のPt粒子の挙動とは異なる挙動を示すことが見出された。
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