研究課題/領域番号 |
23760692
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
大平 圭介 北陸先端科学技術大学院大学, グリーンデバイス研究センター, 准教授 (40396510)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 太陽電池 |
研究概要 |
本研究では、ガラス基板上に触媒化学気相堆積(Cat-CVD)法で堆積した水素化非晶質シリコン(a-Si:H)膜を、ミリ秒の桁の瞬間熱処理であるフラッシュランプアニール(FLA)により、クロム(Cr)密着層を用いずに、膜剥がれ無く結晶化させ、太陽電池応用可能な多結晶シリコン(poly-Si)膜を形成する手法を確立することを目的としている。平成23年度は、Cat-CVDでの製膜条件と水素含有量、応力の関係を系統的に調査し、また、膜剥がれとガラス基板材料との関係についても調査を行った。さらに、膜剥がれは必ずガラスとシリコン膜の界面で起きることと、水素を含まないa-Si膜では膜剥離が起きないというこれまで得ている知見に着目し、ガラス基板とa-Si:H膜の間に、水素を含まないスパッタa-Si膜を挿入した構造の結晶化を検討した。この構造は、スーパーストレート型の太陽電池構造において、スパッタ層をエミッタとして利用することを想定している。現時点では、Cat-CVDでの製膜条件、ガラス基板によらず、また、スパッタ膜を挿入した構造においても、膜剥離の抑止には至っていないが、スパッタ/Cat-CVD積層a-Si膜の断面透過電子顕微鏡(TEM)観察より、Cat-CVD膜とスパッタ膜の界面に、空隙の多い粗な構造が確認されていることから、CVD膜堆積前の処理条件の検討などにより、解決できる可能性はあると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究立案当初は、a-Si膜の水素含有量などの物性制御、もしくは、ガラス基板材料の最適化により、膜剥離の抑止が可能であろうと期待していたが、予想に反し、膜剥離の抑止は容易ではないことが明らかとなった。そこで、スパッタa-Si膜を挿入する構造での解決を試みているが、その分、当初の計画より研究の進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
スパッタa-Si膜を挿入した構造に注力し、界面特性改善のためのスパッタa-Si膜表面の前処理(薬液処理、原子状水素処理)の適用を試みる。それでも解決が難しい場合には、ガラス基板表面に、事前に凹凸構造を形成し、アンカー効果を利用することで、膜の密着性の向上を試みる。膜剥離を抑止できる条件が明確となった後、結晶化時に自然形成される周期凹凸構造の裏面光散乱構造への応用と、スーパーストレート型太陽電池作製の作製および評価を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度においては、既存の消耗品類にて実験可能な膜剥離抑止の検討から研究を開始したが、この工程が予定より遅れているため、予算使用にも遅延が生じている。未使用分については、平成24年度に、ガラス基板類、ガス類、スパッタターゲットなどへの活用を予定している。また、研究を加速させるため、平成24年3月より、研究補助員を1名雇用しており、平成24年度も引き続き雇用を行う。なお、実験装置などは、学内の既存のものを活用するため、新たな備品の購入予定はない。
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