研究課題/領域番号 |
23760695
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
上坂 裕之 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90362318)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 高分子 / ガスケット / シリンダー / 表面改質 / 摩擦制御 |
研究概要 |
平成23年度目標である目標(1)(円筒内面高速DLC成膜法によるDLC膜が摩擦係数低減に有効であることの検証)を達成した:DLC膜は低摩擦の炭素系薄膜である.油圧サスのPTFEガスケットと鋼製シリンダー内面のしゅう動部において,内面側へのDLC成膜が求められている.本研究では表面波励起プラズマを用いる円筒内面への高速DLC成膜装置により成膜を行った.その結果,DLC膜の表面粗さが成膜開始から成膜時間30分にかけて増大し,その後40-50分にかけて基板粗さ程度まで減少することが明らかになった.さらに成膜時間によって粗さが異なるDLCを成膜したSUS304ディスクとガスケット材料を模擬したポリアセタール(POM)製円筒の摩擦試験を行った.摩擦係数は,DLC表面粗さの平均傾斜角に依存する掘り起こし成分と凝着成分の和であることがわかった.基材とPOMとの摩擦係数が0.264であるのに対して,成膜時間50分で粗さが基材と粗さの変わらないDLC膜とPOMとの摩擦係数は0.188と小さくなった.成膜時間を調整して粗さの増大を抑制した場合,円筒内面高速DLC成膜法によるDLC膜が摩擦係数低減に有効であることが実証された.平成24年度目標である目標(4)(ガスケット/シリンダー間の低面圧化による,フッ化による摩擦力低減効果の最大化)を達成した:医療用プラスチック注射器には,摩擦力低減のため内面にシリコーンオイルが塗布されている.本研究ではシリコーンオイルを用いない無潤滑注射器の開発を目標とし,熱可塑性エラストマー製ガスケット表面にパーフルオロポリエーテル塗布及び真空紫外線照射による光化学的フッ素化処理を行った.また,フッ素化処による摩擦力低減効果を最大化するためにバレル内径を拡大して低面圧化し,かつ自封作用を増大するガスケット形状とすることで漏れ荷重を保ったまま,摩擦力を低減できることを示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度目標である目標(1)(円筒内面高速DLC成膜法によるDLC膜が摩擦係数低減に有効であることの検証),目標(2)(DLCのナノレベル粗さが摩擦係数に及ぼす影響の解明)のうち(1)を達成したが(2)は達成できなかった.しかしながら平成24年度目標である目標(4)(ガスケット/シリンダー間の低面圧化によるフッ化による摩擦力低減効果の最大化)を前倒して達成することが出来た.従って達成分量としては(2)の未達と(4)の前倒し達成が相殺するので,概ね順調な進展状況と考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度目標のうち未達である目標(2)と,平成24年度目標として計画した目標(3)(高密度プラズマ処理を用いた高分子表面の弾性率増加が摩擦係数低減に有効であることの検証)と目標(5)(注射器/ショックアブソーバーの実機による効果の検証)を予定通り行う.ただし(5)を実施するにあたっては,実機試験の前にショックアブソーバーを模擬した円筒/ガスケットしゅう動試験が必要と判断されたため,同試験のための円筒/ガスケットしゅう動試験装置を新たに設計しくみ上げて使用する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初H24年度予算として計上した分は予定通りに使用する.H23年度予算のうち未使用だった研究経費については,新たにくみ上げる円筒/ガスケットしゅう動試験装置用の部品・自動制御ソフトウェア・計測器等の購入に充てる.(本試験機については,H23年度後半になって必要であることがわかったものであり,よって仕様の策定が年度内に間に合わずH24年度に設計を確定してから部品を発注することになった.それに伴って必要部品の購入資金をH24年度に残した.)
|