研究課題/領域番号 |
23760697
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浜 孝之 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (10386633)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マグネシウム合金板 / 繰り返し塑性 / 結晶塑性有限要素法 / 双晶変形 / 環境材料 |
研究概要 |
本年度得られた成果を以下に箇条書きで示す.(1)AZ31マグネシウム合金板を対象に適切な面内繰り返し引張-圧縮試験を行うため,実験装置の製作と試験条件の最適化を行った.種々の検討により,適切なしわ抑え力条件およびひずみ測定方法を見出した.その結果,最大ひずみ幅8%(±4%),最大繰り返し数(サイクル数)10回程度まで面内繰り返し引張-圧縮変形を与えた際の応力-ひずみ線図を測定できる試験法を確立した.一方で,試験片のチャック時に発生する張力やしわ抑え板との摩擦力を十分低減できていないのが現状であり,今後解決すべき課題である.(2)(1)で確立した試験法を用いて,種々の負荷条件下でAZ31マグネシウム合金板の面内繰り返し引張-圧縮試験を行った.平成23年度は特に,平均ひずみをゼロとしたときの種々のひずみ幅条件で実験を行い,マクロな応力-ひずみ関係の推移を考察した.その結果,サイクル数の増加に伴う加工硬化挙動の変化は,引張変形時と圧縮変形時で逆の傾向を示すことが明らかとなった.またこの傾向はひずみ幅が大きくなるとより顕著になることが判り,ひずみ幅条件やサイクル数が応力推移に大きな影響を及ぼすことが示された. (3)本研究室で開発を進めている結晶塑性有限要素解析プログラムを用いて,単純引張/圧縮や負荷-除荷過程の解析を行った.その結果,これまで実験的に明らかにされている諸特性(応力-ひずみ線図の非対称性や,双晶の活動度など)を計算でも再現でき,プログラムの妥当性を示した.また等塑性仕事面の解析を行ったところ,実験で見られる強い異方硬化挙動を計算でも再現することができた.また,その変形メカニズムを明らかにした.繰り返し変形に対しては異方硬化挙動も重要な役割を担うことから,その挙動をより詳細に考察するために二軸引張試験機の開発に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり,面内繰り返し試験方法を確立し,また種々の負荷条件下でマクロな応力-ひずみ線図を測定することができた.しかしながら,試験方法にはまだ改善の余地が残されており,今後の課題として残されている.本点において当初の予定に比べてやや遅れが見られるといえる.一方結晶塑性有限要素解析においては,平成23年度の計画には含まれていなかった等塑性仕事面の解析に着手することができ,大きな進展を得ることができた.またこの結果に基づき,等塑性仕事面を実験的に測定することを目的とした二軸引張試験機の開発にも着手することができた.これにより,当初の予定以上に幅広い知見の獲得が期待できる.以上の結果を総合的に鑑みて,【おおむね順調に進展している】と判定した.
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今後の研究の推進方策 |
おおむね当初の予定通り研究が進展していることから,平成24年度も当初の予定通り研究を進める所存である.具体的には,(1)繰り返し引張-圧縮試験時のチャック力および摩擦力を低減する方法の検討,(2)繰り返し変形中の結晶レベルのミクロな変形に関する実験調査,(3)反転負荷を伴う負荷経路に対応した結晶塑性有限要素法解析プログラムの開発,などである.平成23年度から残されている課題である(1)については,チャック方法を改良して新たなジグを作成することで,チャック力の低減を図る所存である.また,引き続き潤滑材の検討を進めることで,摩擦力の低減を検討する予定である.また前述のように,結晶塑性有限要素法による等塑性仕事面の解析に基づいて二軸引張試験機の開発に着手しており,ハード面の開発はほぼ終了している.平成24年度は制御面(ソフト面)の開発を進め,平成24年度中の立ち上げを目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,実験研究で使用する試験片やひずみゲージ,組織観察で用いる薬品などの消耗品を予算に計上している.また,二軸引張試験機で用いる部品や制御関連のソフトウェアを計上している.さらに,得られた成果を学会にて講演発表するため,国内会議1回,国際会議1回に参加すると試算して参加旅費を計上している.
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