研究課題/領域番号 |
23760701
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
石川 善恵 香川大学, 工学部, 准教授 (20509129)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | レーザープロセッシング |
研究概要 |
本研究では、従来の液相レーザーアブレーション法よりも弱い強度(十分の一程度)のレーザー光を液相中に分散させた原料粉体に照射することによって、原料粉体が溶融するプロセスを利用した新しい真球粒子の合成技術開発に取り組む。本研究ではサブマイクロ~ナノメートルの真球ルチル型酸化チタン粒子の合成を試み、真球性やサイズ分散性の制御技術の開発や、真球性が散乱特性に及ぼす影響の検証を行う。ルチル型酸化チタンは高い屈折率を有しており、粒子の高度な真球化およびサイズ制御が可能になれば、高い精度で性能制御が可能な顔料や化粧品、フラットパネルディスプレイなどへの光散乱体としての応用が期待できる。具体的に本研究では、サブマイクロ~ナノメートルの真球ルチル型酸化チタン粒子の合成におけるレーザー照射条件が生成粒子の真球性やサイズ分散性に及ぼす影響を検証し、さらに得られた粒子の真球性が光散乱特性に及ぼす影響の検証を行う予定である。その中で、平成23年度は主にレーザー条件や原料粒子サイズに着目し、真球性の向上や粒子サイズの制御に重要な因子の解明を行った。上記の検討の中で、得られる生成粒子の平均粒子サイズは、照射フルエンスが大きくなるに従い、サブマイクロメートルのオーダーに大きくなるが、あるフルエンスを超えると数10ナノメートルの球状粒子の割合が増加していく傾向があることが明らかになった。この時、照射フルエンスの増加に従い、酸化チタンと分散媒との化学反応によって生成すると考えられるTiO2・nH2Oの量も増加していることが明らかとなった。生成したTiO2・nH2Oを化学的溶解によって除去し、精製単離された数10ナノメートル酸化チタン粒子は、これまで我々が報告してきた液中レーザー溶融法によって生成するサブマイクロメートル球状粒子よりも真球性に優れていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、平成23年度は、主にレーザー条件や原料粒子サイズに着目し、真球性の向上や粒子サイズの制御に重要な因子の解明を行う予定であった。具体的には「レーザー条件や原料粒子サイズが真球性や粒子サイズに及ぼす影響の調査」として以下の2項目、i) レーザーフルエンスの影響,ii) 照射時間の影響を、さらに「散乱特性評価試験用の試料薄膜作製のための予備実験」としてiii) 散乱特性評価試料用のTiO2粒子分散樹脂膜の作製の検討を行う予定であった。このうち、i)とii)に関してはほぼ達成できたと考えられるが、iii)の項目にまで検討が及んでいない。その理由として、照射後の酸化チタン粒子が還元状態であるために青紫色を呈しており、散乱体として適さない状態であると考えられることから、粒子合成過程の再検討を新たに行う必要性が出てきたため、現時点ではiii)に関する検討を行っていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、照射後の酸化チタン粒子が還元状態であるために青紫色を呈しており、散乱体として適さない状態であることが明らかとなりつつある。そこで平成24年度より、照射後に得られた粒子に対する後処理(熱処理、または化学的処理など)による還元状態の解消や、レーザー照射時の粒子の分散液の成分による還元反応の制御を試みる予定である。特に後者の照射時の粒子分散液の成分による反応の制御方法の開拓は、本液中レーザー溶融法を他の材料に適用する際にも重要な知見となることから、将来的に本手法に関する研究にとって大変重要である。これらによって酸化チタン粒子の還元状態の抑制を実現し、散乱体への応用の可能性を検証していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度予算から次年度に使用する金額では、主に生成した酸化チタン球状粒子の還元状態の抑制や、還元状態の生成を抑制するための分散液を検討する際の試薬として使用予定である。また、粒子の精製や回収の際に使用する消耗品等に使用する予定である。
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