研究課題/領域番号 |
23760703
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
阿相 英孝 工学院大学, 工学部, 准教授 (80338277)
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キーワード | 構造転写技術 / 材料加工・処理 / アノード酸化 / コロイド結晶 |
研究概要 |
申請者が取り組むナノ・マイクロ規則構造作製技術を有用なプロセスとして位置付けるためには,パターンの規則性を高度に制御することに加え,マスクの耐エッチング性を向上させる必要があった。また,デバイス応用の可否に加え特性向上を決定づけるには,パターンの精密性もさることながら加工面積の拡大も優先課題であった。本年度は,前年度に引き続き,スピンコート法を用いた微粒子(ポリスチレン,シリカ微粒子)の二次元自己組織化膜形成条件の最適化に加え,レジスト製マスクを介した種々の湿式化学エッチングによる構造転写を実施した。 前年度は下地基板として原子レベルで平滑な各種半導体単結晶基板(Si,GaAs,InP)を用いて,作製したマスクの有用性を検証したが,本年度は半導体基板に比べて表面の平滑性に劣るアルミニウム基板(圧延板)に対してもマスクの作製条件を模索した。その結果,アルミニウム基板に対して,直接微粒子を展開・配列させても高い二次元の規則性を持つ自己組織化膜を形成できなかったが,レジストを中間層として塗布し,その上に微粒子を展開することで,微粒子配列の規則性を改善することできた。また形成した微粒子を間接的なマスクとして中間層のレジストに構造転写することで,ミクロン周期で規則的な開口部の配列を持つフォトレジスト製ハニカムマスク作製することができた。また,そのマスクを介して下地基板であるアルミニウムを位置選択的に化学エッチングできることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基板表面の平滑性が高い各種半導体単結晶基板上では,開口部がミクロン周期で規則配列したレジスト製マスクの作製が比較的容易であり,下地基板との密着性にも優れることから,アノード酸化などの湿式プロセスにおいて,微細加工位置を高度に制御することができた。一方,平滑性に劣るアルミニウム表面の場合には,前処理に電解研磨を導入し,表面粗さを軽減した後に同手法を適用することで,アルミニウム基板上においても開口部がミクロン周期で規則配列したレジスト製マスクを得ることができた。マスクを介した下地アルミニウム基板の微細加工に関しては,十分に検討が進んでいないが,位置選択的な反応を制御するマスクとしては十分に機能することを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで課題となっていた,金属アルミニウム上への高規則性・高密着性マスクの形成に関しては,前処理条件の最適化も含め検討を継続した結果,半導体基板同様に本手法を適用できることがわかった。しかしながら,マスクを介した種々の微細加工に関しては,十分に検討が進んでいないことから,マスクの耐薬品性,長期密着性などを系統的に評価する必要がある。二次加工の手法としては,電解エッチングだけでなく,通常のアノード酸化やめっき反応などを組み合わせることで,異種材料とのコンポジット化や新規構造体の創製などへ展開を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究遂行のための設備備品のほとんどは備わっており,新規に導入を必要とする設備備品はない。そのため研究費は,系統的な研究を実施するための実験材料(微粒子懸濁液,試薬,基板),研究成果を公開するための国内旅費,国外旅費および学術雑誌への論文投稿にかかる費用などで使用する予定である。
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