申請者が取り組むナノ・マイクロ規則構造作製技術を有用なプロセスとして位置付けるためには,パターンの規則性を高度に制御することに加え,マスクの耐エッチング性を向上させる必要があった。また,デバイス応用の可否に加え特性向上を決定づけるには,パターンの精密性もさることながら加工面積の拡大も優先課題であった。本研究を通じて,スピンコート法を用いた微粒子(ポリスチレン,シリカ微粒子)の二次元自己組織化膜形成条件の最適化はほぼ達成し,レジスト製マスクを介した種々の湿式化学エッチングによる構造転写技術の基礎を確立した。 下地基板としては,原子レベルで平滑な各種半導体単結晶基板(Si,GaAs,InP)を用いて,作製したマスクの有用性を検証し,周期的に開口部を持つマスクを介して,下地基板を位置選択的に化学エッチングできることを確認した。また,半導体基板に比べて表面の平滑性に劣るアルミニウム基板(圧延板)に対しても同プロセスを適用できることを確認した。 バルク基板以外にも,ナノポーラスアルミナ皮膜を下地基板として,その上に微粒子マスクを形成し,微粒子間に露出したアルミナ層を選択的に溶解除去することで,ポーラスアルミナから成るバンドルアレイ構造体を作製することもできた。この結果は,微粒子とポーラスアルミナの接触界面において,2次処理に用いる液の浸透を制御できることを意味している。位置選択的な溶液の充填に基づきナノ反応場を制御することで,異物質(無機材料や金属材料)を位置選択的に充填したコンポジット材料の作製にも成功した。 マスクを介した種々の微細加工に関しては,系統的な検討はまだ十分には進んでいないが,本プロセスを応用することで,規則的な高次構造体の作製をはじめ,異種材料とのコンポジット化など,様々な応用分野に研究が展開されることが期待される。
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