研究課題/領域番号 |
23760706
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
溝尻 瑞枝 独立行政法人産業技術総合研究所, サステナブルマテリアル研究部門, 研究員 (70586594)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 微細加工 / 熱電薄膜デバイス / 反射防止構造 / リソグラフィ |
研究概要 |
太陽光を熱源とした熱電薄膜発電モジュールにおいて,熱電薄膜表面に形成した周期構造により反射率を制御して熱電薄膜の平面方向に温度差をつけるため,評価用熱電薄膜モジュールを作製した.更に,同モジュール表面に周期構造を付与するためのプロセスとして,ピコ秒レーザパルスに誘起される非線形光吸収をリソグラフィプロセスに適用した微細加工プロセスを提案し,加工基礎特性を評価した.これまでに開発されてきた,フェムト秒レーザパルスに誘起される非線形光吸収を半導体プロセスへ導入した微細加工プロセスは,立体表面上への微細構造形成に大変有用なプロセスであった.本研究では,その利点を熱電薄膜モジュールのpn接合部の段差上への周期構造形成に利用する一方で,大面積にパターニングが必要な熱電薄膜発電モジュールへの展開を可能にするため,フェムト秒レーザよりも安価に高出力が得られるピコ秒レーザを利用することでマルチビームによる構造形成の大面積化を目指し,非線形光吸収によるパターニングの検討を行った.SiO2基板上に塗布したレジストに波長1064nmのピコ秒レーザパルスを集光し,パターニング特性を調べた.i線用化学増幅型ネガレジストに集光したところ吸収はなく,ベイク処理・現像後にレジストパターンは形成されなかったが,photosensitizerとphotoacid generatorを加えて吸収端を長波長側へシフトさせたところ,非線形的な光吸収が生じ,回折限界以下の線幅を有するレジストパターンの形成に成功した.また,周期構造を付与してその効果を検証するための評価用熱電薄膜発電モジュールを作製し,特性評価を行った.Bi-Te系熱電薄膜をリソグラフィプロセスで形成し,モジュールの基本特性を評価した.これらの研究成果は,熱電及びMEMSに関する国際会議や応用物理学会で発表するとともに,国際的な学術論文に投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,ピコ秒レーザパルスを低NAレンズで集光した場合のシリカガラス基板上でのパターニング特性を調べた.一方,研究計画では,熱電薄膜上へのパターニングの際の反射光の影響を明らかにすることを優先し,評価用の熱電薄膜発電モジュールの作製は次年度に行う予定であったが,後者の方が前者に比べて進捗したため優先して学会発表,論文投稿を行った.
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今後の研究の推進方策 |
レジストの光吸収端の調整によって,基本波長1064nmのピコ秒レーザパルスにおいて回折限界以下のパターンが形成される新たな知見が得られたが,フェムト秒レーザに比べてパルス幅が長いため光化学反応だけではなく,熱の影響が大きいと考えられる.今年度,熱電薄膜発電モジュール上にその微細周期構造を付与するためには,パターニング中の熱電薄膜からの反射光の影響が大きくなり,形成パターンへの影響が予測される.反射光のパターニングへの影響を低減するため,集光レンズ等光学部品を新たに導入して集光特性を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
反射光のレジストパターニングへの影響を低減するため,ピコ秒レーザパルスの集光特性を変えるための光学部品を導入する.また,レジストや基板材料等,消耗品の購入に充てる.
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