研究課題/領域番号 |
23760707
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森貞 好昭 大阪大学, 接合科学研究所, 講師 (00416356)
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キーワード | 摩擦攪拌プロセス / 超硬合金 |
研究概要 |
高速フレーム溶射を用い、SKD61の板材表面に厚さ約300μmの超硬合金皮膜(WC-CrC-Ni及びWC-Co)を形成した。原料粉末としては、ガスアトマイズ法で製造された平均粒径40μmのWC-20mass%CrC-7mass%Ni造粒焼結粉末およびWC-12mass%Co造粒焼結粉末を用いた。WC-CrC-Ni皮膜の断面観察を行ったところ、巨視的には、クラック・剥離等が存在しない良好な皮膜が形成されていたが、皮膜内部には多数の欠陥が確認された。当該溶射超硬合金皮膜に対し、高速回転させた超硬合金製のツールを圧入し、50 mm/minの速度で移動させることでFSPを施した。FSPを施した領域は金属光沢を呈しており、FSPに特有の筋状のツールマークが形成されていた。また、FSP領域にクラック等は観察されず、良好な表面形状を有していた。FSP前後におけるWC-CrC-Ni皮膜のTEM観察を行ったところ、溶射後の状態で存在していたポアがFSPによって消失していることが確認された。加えて、ツールの攪拌効果によるWC粒子の再配列、金属結合相の微細化および部分的に破砕されたCr3C2粒子の分散が観察された。WC-Co皮膜のCoの結晶粒はFSPによって大幅に微細化されており、~200nmのナノ組織となっていた。FSPによる結晶粒微細化の効果については多数の報告が存在するが、通常のFSPで得られる結晶粒は数μm程度である。溶射超硬合金皮膜へのFSPで~200nmの微細な結晶粒を有する金属結合相が得られた理由としては、FSP中に導入される歪量が、WC粒子の存在によって大きくなったことが考えられる。また、ツールによって破砕されたWCおよびCr3C2の微細な破片が金属結合相中に分散し、いわゆるピン止め効果によって結晶粒成長を抑制した可能性もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶射超硬合金皮膜へのFSPにより、超硬合金相の金属結合相がナノ組織化されることを確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成23、24年度で得た結果を基に、金属結合相の種類が異なる超硬合金についても同様の検討を行い、金属結合相を有する種々の硬質材料に対して普遍的に適用可能な改質技術を確立する。また、金属結合相の差異(結晶構造、変態の有無、積層欠陥エネルギー等)が再結晶粒径に及ぼす影響を、摩擦攪拌プロセスによって導入する歪、入熱及び冷却速度の観点から整理する。これらを系統的にまとめ、超硬合金の組成及び組織を自由に制御し、従来の超硬合金の特性を大幅に凌駕する新規ナノ超硬合金の創製を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として、FSP用の超硬合金製ツール及び種々の溶射超硬合金皮膜が形成された金属基材の購入に使用する。
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