研究概要 |
本年度は石炭フライアッシュ中のレアアースの精密定量に加えて、最適な抽出方法を考える上でレアアースの溶出挙動を明らかにした。フライアッシュ中のレアアース(Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)含有量についてはその標準試料であるNIST SRM 1633bで420mg/kg, 本研究で使用したIRANT EOPでは806mg/kg程度であり、イオン吸着型を除く鉱石に匹敵するものであったが、種々のフライアッシュ中のレアアースの総量に関する測定事例はこれまでに存在しなかったため、本課題では7種類のフライアッシュについてレアアースの含有量についての精密定量を行った。標準試料であるIRANT EOPによって測定系のバリデーションを行い、提供を得た7種類のフライアッシュサンプルについて313-961mg/kgとのレアアース含有量の定量値を得た。更にこの中から2種類のフライアッシュをピックアップして、レアアースの溶出挙動を明らかにした、溶出試験は希硫酸中にて行われ、温度(30℃,60℃,80℃)と時間(5分,10分,30分,60分,120分)を変化させてレアアース各元素の抽出率の変化を測定した。レアアース各元素の抽出率は時間及び温度と共に増大し、前記の条件化では最大で60%程度の値が得られた。さらに、これらの溶出挙動に対して境膜内拡散律速を仮定した未反応核モデルを適用したところ、フライアッシュ中に存在するレアアースにはフライアッシュ粒子のごく表面に存在し、即時に溶出するものと、より粒子内部に存在し、時間と共に徐々に溶出するものの2種類が存在することが明らかになった。以上の結果は現在論文として編集し、International Journal of Environmental Science & Technology誌に投稿中である。
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