本申請課題は石炭火力発電所にて生成する副産物であるフライアッシュ中へのレアアースの濃化プロセスと、希酸中への溶出プロセスを明らかにすることでレアアースの回収の指針を得ることを目的としている。本年度はレアアースの濃化プロセスとその精密定量に着目をした。レアアースを含むフライアッシュの標準物質であるIRANT EOP中のレアアース濃度の認証値をベースにしたところ、本申請課題において提案した全溶解方法、すなわちフライアッシュ0.1gに硝酸とフッ酸を各5mLずづ加えて200℃で2時間加熱し、後に硫酸白煙処理を施すことによる完全分解で90-102%ののレアアースの回収率を達成することができ、これは岩田らの先行研究を超えるものであった。 こうして精密定量を行ったフライアッシュ中のレアアースの濃度はOddo-Harkins則、すなわち偶数の原子番号を持つ元素は奇数の原子番号を持つという法則に完全に追随した。このことは原料となった石炭中のレアアース濃度もまたOddd-Harkins則に従い、フライアッシュへの移行に関してレアアース毎の特異性はないということが明らかになった。また、先行する文献中から引用した石炭中のレアアースの濃度と今回のフライアッシュ中のレアアースの濃度を比較したところ、フライアッシュ中の全てのレアアースの濃度は10倍弱程度であり、一般的に石炭とフライアッシュの燃焼前後の重量比は10対1なので、ほぼ全量のレアアースが石炭中からフライアッシュへと移行することが示唆された。昨年度の研究成果と照らし合わせて、フライアッシュにおけるレアアースの濃化場所は粒内とその表面であり、希酸によって表面に析出しているレアアースが優先的に溶出することが示された。
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