研究課題/領域番号 |
23760716
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
佐藤 剛史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60375524)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 水素透過膜 / 電解 / 水素製造 |
研究概要 |
高温高圧水+水素からなる高効率還元反応場は、新規反応場としての期待が高い。そのため、高温高圧水中への選択的かつ連続的水素供給法が提案できれば、還元反応場を利用したプロセス構築の可能性も大きい。さらに、高圧水素貯蔵システムとしても有用である。 本年度は、高温高圧水中への水素供給を目的とした高温高圧用の水素透過型水電解セルを作製した。当初は、Pd膜管と中心のPt電極間に通電する二重管型のセルを考案していたが、耐圧性能の向上を図り装置設計を変更した。最終的に、管の中央部に円状のPd膜を配置し、管の片側に各4個のポートを配置する構造とした。電解側のポートには、Pt電極、電解液の入口、出口、膜付近を測定する熱電対を挿入した。Pd膜の反対側(透過側)のポートには、電解液の入口、出口、膜付近と管端付近を測定する熱電対を挿入した。 まず、作成したセルの耐圧性能を評価した。セル自体は400℃、30MPaの耐圧性能を有するが、ライン類を密閉するテフロン部に関して10MPaの耐圧性能を確認した。さらに、作成したセルに対して送液ポンプ等を組み込むことで、常温常圧用の流通式反応装置を組み立てた。作成した装置を用いてPd膜とPt電極に通電を行ったところ、アルカリ水溶液を流通させた際に電解側での電気分解は良好に進行するものの、透過側での水素生成は確認できなかった。これは、最初に酸水溶液での実験を行った際に、膜表面に汚れが堆積したことが原因と考え、現在、膜の交換などを含めた装置改良を行っている。 これと並行して、本装置の原理を確認するために簡易的な装置を作成し、常温・常圧下にてPd膜とPt電極間に通電した。その結果、電解側に加えて透過側からの気体生成が生じ、本手法による水素生成が原理的に可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、高温高圧用の水素透過型水電解セルの作製が目標であった。構造設計をし、実際に400 ℃、30 MPa対応のセル容器を作成した。さらに、テフロンシーラントを組み込みライン存在下での10 MPaの耐圧性能を確認した。 また、実際に通電を行い水の電気分解の進行を確認した。実セルでの水素透過は確認していないが、同種の簡易的な装置を作成したところ、電解側に加えて透過側からの気体生成が生じ、本手法による水素生成が可能であることを確認した。本装置が原理的には妥当であることを確認しており、改良により水素透過性能も向上すると考える。以上のことから、目標はおおむね達成したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度作成した常温常圧用の流通式反応装置を用い、常温常圧にて、水素生成能、水素透過能の電流値・アルカリ水溶液濃度依存性を評価する。水素、酸素等の気体生成物はGC-TCDにて定性定量する。 次に、セルにヒーターを導入し、膜付近を高温状態とすることが可能なものとする。この新たな装置を用いて、水素生成能と温度の関係を評価する。テフロンの耐熱温度を考慮して200 ℃以下の高温条件での検討を進める。温度上昇により、Pd膜の水素透過能が増すことから高温では透過側での水素生成が有利となると予想できる。次に、背圧弁と水素トラップを導入することで、高圧条件での実験が可能な装置とする。この装置を用い、圧力10 MPa以上での高圧条件で同様の検討を行う。高圧条件とすることで、水は水蒸気でなく液体として存在しうるため、電解には好条件となる。以上の実験を通じて、高温高圧下での水素製造の可能性を評価する。 なお、昨年度は消耗品であるテフロンシーラントや、故障が生じた際のポンプ交換部品の購入のための費用を見積もって確保したところ、予定よりも消耗品の消費が少なく支出が少なくなった。これらは、今年度も同様の目的で引き続き使用するものとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
セルを昇温可能とするためのヒーターユニットを導入する。また、昨年度からの残額も利用しながら消耗品であるテフロンシールの購入、ポンプのメンテナンスのための交換部品、分析用ガスや試薬を購入する予定である。また、化学工学会秋季大会・年会を中心とした学会での情報収集を図る。
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