研究課題/領域番号 |
23760716
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
佐藤 剛史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60375524)
|
キーワード | 水素透過膜 / 電解 / 水素製造 |
研究概要 |
平成23年度で作成した水素透過膜であるパラジウム膜を用いた水素透過型水電解セルに、電解液や水素回収用水を供給する高圧ポンプ、膜や電解部を加熱するヒータージャケット、背圧弁等を接続することで水素製造装置を作成した。装置作成を進めていく中で、セル形状の大幅修正を行った。また、パラジウム膜と電解部との密閉性確保のために、膜周囲にチタンワッシャーやテフロンシールを配置する等の工夫を行うことで、最大2MPaでの実験が可能となる密閉性が比較的高い電解装置を作成することができた。 本装置を用いて大気圧下での電解実験を行った。まず、水酸化カリウム水溶液を用い、電圧一定下での測定を行った。0.5M水酸化カリウム水溶液で電解液流量の影響を検討したところ、電流値は電解液流量0.01 ml/minに達するまで大きく増加し、それ以上の電解液流量では電解液流量0.01 ml/minの場合と比較してほとんど違いはなかった。これは、流量が遅い場合には気泡が流路内に滞在するために通電が抑制されるためと考える。一方、ある程度流量が速い場合には気泡が速やかに流路から排出されるために、安定した通電が可能であった。 次に、温度の影響を検討した。その結果、温度の上昇により電流値および水素透過率が増加し、高温ほど水素製造・水素透過に有利であることがわかった。特に、90 ℃では透過率50 %以上と、発生した水素の半分以上が膜を透過して高純度水素として回収された。一方、100 ℃では電解液の蒸発が生じたためか、電流値が大幅に低下することもわかった。このことは、高圧下にて電解液の蒸発を抑えた状態での電解が水素製造に有効である可能性を示している。現在、加圧下での測定を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電解セルの大幅な改良を行ったために、データ取得のための実験開始時期が遅れてしまった。データは得られつつあるが、対外発表に耐えうる状態には至っていないためである。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き加圧下での測定を進め、高圧条件下での効率的に水素製造に関する条件を検討する。 また、新たに水素透過膜を利用した水素化還元反応実験を行い、パラジウム膜表面の水素化還元反応性を評価する。ここではモデル反応として、トルエンのメチルシクロヘキサンへの水素化還元反応を行う。反応条件を設定し水素発生量(水素透過量)を変化させ、水素化還元反応進行度、パラジウム膜の水素化効率を評価する。場合により、セルの改良も行う。 さらに、これまでの実験結果をもとに、水素製造と水素透過膜表面での水素化還元反応に有利な条件を整理することで、今後の装置改良に向けた指針を提案するとともに、得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
水素化還元反応実験を行うために、予備的装置の作成および本装置の改良が必要と考えている。そのために装置材料の購入に用いる。 また、消耗品である試薬、ガス等の購入に用いる。 さらに、学会等での研究情報収集にも活用する。
|