研究概要 |
水素透過膜であるパラジウム膜と白金電極間に通電して水を電解し、パラジウム膜を透過した高純度水素を回収する水素透過型水電解セルを作成し、それに電解液送液部、加熱部、背圧弁等を接続した水素製造装置を作成し、最大2MPaでの運転が可能であることを確認した。常圧にて温度の影響を検討した結果、温度の上昇により電流値および水素透過率が増加し、高温ほど水素製造・水素透過に有利であることがわかった。特に、90℃では透過率50%以上と、発生した水素の半分以上が膜を透過して高純度水素として回収された。一方、100℃では電解液の沸騰が生じて気体となったたため、電流値が大幅に低下することもわかった。このことは、高圧下にて電解液の沸騰を抑えた状態での電解が水素製造に有効である可能性を示している。 さらに、水電解で生成して膜を透過した水素を利用する水素化還元装置を新たに作成し、トルエン90wt%, ベンゼン5wt%, 2-フェニルエタノール5wt%混合溶液の水素化還元を温度80℃にて行うことで、パラジウム膜表面の水素化還元反応性を評価した。予備実験でパラジウム膜のみでの水素化活性が低いことがわかったため、水素化を促進させるために、透過側のパラジウム膜の透過側に5wt%Ru/Cの触媒層を加えた。その結果、反応時間の経過とともに原料の水素化化合物生成が進行しており、本システムにより水素化が原理的に可能なことが明らかとなった。しかし、水素化率は時間オーダーで数%と低く、今後の水素化率向上のためには、触媒と膜の接触方法など、装置上改良すべき点がかなり存在することがわかった。
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