研究課題/領域番号 |
23760717
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
飯島 志行 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70513745)
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キーワード | 表面・界面物性 / 複合材料・物性 |
研究概要 |
平成24年度ではまず、前年度に構築した高分散性複合微粒子の調製プロセスにおいて分散安定化剤として用いた機能性ナノ粒子種の拡張性を検討した。具体的には前年度までに使用した、有機鎖がアルキル鎖とPEG鎖に分岐したアニオン性界面活性剤を固定化したSiO2ナノ粒子(約30nm)に変えて、同界面活性剤を固定化したTiO2ナノ粒子(約10nm)やFe3O4ナノ粒子(約10nm)を用い、Auナノ粒子(液相還元法・約80nm)、SiO2ナノ粒子(Stober法・約100nm)、Fe3O4ナノ粒子(ポリオール法・約10nm)などの母材粒子に対する複合化を母材粒子の貧溶媒中で行った。それぞれの系において母材粒子に対する機能性ナノ粒子の吸着が確認され、得られた複合微粒子は各種の有機溶媒に良好に分散安定化することを確認した。また、機能性ナノ粒子が十分に被覆された複合微粒子を用いた系において、本複合化プロセスの繰り返し操作によって複合微粒子の高次構造化が可能であることが示唆された。加えて、機能性ナノ粒子の各種有機溶媒中における母材粒子に対する吸着現象の違いを考察するために、ミクロンサイズのSiO2微粒子をAFM短針に接着したコロイドプローブを用い、エタノールおよびトルエン溶媒中においてアルキル鎖とPEG鎖に分岐したアニオン性界面活性剤を固定化した平板間との相互作用を評価した。エタノール溶媒中ではシリカ粒子と界面活性剤を固定化した平板間において接近過程と分離過程の両者で斥力が観察された一方で、トルエン溶媒中では接近過程で引力、分離過程でも大きな付着力が認められ、ミクロな視点での相互作用測定結果からも各種溶媒中における高分散性ナノ粒子の吸着挙動が説明できることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では①高分散性複合粒子の調製プロセスで用いる機能性ナノ粒子種の拡張の検討、②複合化プロセスの繰り返し操作による複合粒子の高次構造化を計画した。①については、前年度までに使用した有機鎖がアルキル鎖とPEG鎖に分岐したアニオン性界面活性剤を固定化したSiO2ナノ粒子(約30nm)に変えて、同界面活性剤を固定化したTiO2ナノ粒子(約10nm)やFe3O4ナノ粒子(約10nm)などに拡張可能であることを確認した。また②については、平成24年度の検討により機能性ナノ粒子が十分に被覆された複合微粒子を用いた系において、本複合化プロセスの繰り返し操作によって複合微粒子の高次構造化が可能であることが示唆されている。加えて、AFMコロイドプローブ法を用いてミクロな視点からも母材粒子と機能性ナノ粒子間の有機溶媒中での相互作用評価の検討も進んでいることから、計画通りに研究が遂行されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度では、これまでに構築したプロセスで調製した高次構造粒子を各種の樹脂材料(たとえば、エポキシ系、シリコーン系、アクリル系樹脂)への分散処理を行い、機能性ナノ粒子が周期性をもって配列した有機無機複合体の調製を検討する。たとえば、単分散性SiO2などの母材粒子にカーボンブラック、Agナノ粒子やアルミナナノ粒子を複合化させた高次構造粒子は、樹脂材料に充填させることで抵抗値が制御されたポリマー、(プラズモン効果を利用した)高感度センサー材料、放熱性ポリマーとしての応用が期待され、高次構造粒子の樹脂中での分散状態が複合材料の物性に大きく影響することが予測される。そのため、高次構造粒子の樹脂中における分散状態と機能性ナノ粒子の配列状態を評価したうえで、得られる複合材料の機能性との関係を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、24年度に購入した備品(電圧源内臓ピコアンメーター 一式)等が予定価格より安価に入手できたために発生したものである。25年度の研究費請求金額と合わせて、次のような使用を計画している。消耗品費として、原料微粒子調製・表面修飾操作・粒子複合化操作で必要となる試薬など(150千円)、ガラス器具等消耗品(150千円)、分析機器セル/高純度ガス(140千円)としての使用を予定する。旅費は、研究成果発表・情報収集を目的とした学会参加(国内:化学工学会第45回秋季大会(岡山大学)を予定(70千円)、国際会議:米国(230千円))、謝金は外国語論文校閲と依頼測定(50千円)、その他の費用として研究成果投稿料(50千円)としての使用を予定する。
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