研究課題/領域番号 |
23760718
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大橋 秀伯 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (00541179)
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キーワード | タンパク質 / リフォールディング / 連続法 / インターフェース / 機能性高分子膜 / リニアポリマー / プラズマグラフト重合 / 低温パーオキサイド法 |
研究概要 |
タンパク質は高い反応性・基質特異性を持ち、幅広い応用用途を持つ。現在大腸菌によるタンパク質の大量発現が可能となっているが、発現したタンパク質に活性を持たせるためにはタンパク質を3次元に正しく折り畳むリフォールディングの過程が必要不可欠である。 タンパク質の大量生産を可能とする連続リフォールディング技術は将来的に大きな需要が見込まれる。本研究では、連続法の特徴的なインターフェースであるタンパク質とバッファーの接触界面に「機能性高分子膜」を用いることで、高効率なリフォールディングを目指している。 23年度までにイソプロピルアクリルアミドリニアポリマーをグラフト固定化した機能化高分子膜の作成に成功しているが、24年度はこれをさらに発展させ、より高いリフォールディング介助効果を示すスルホベタインリニアポリマーをグラフト固定化した機能化高分子膜を作成した。スルホベタインは負と正の電荷(スルホン酸基と四級アンモニウム基)を一分子内に有する機能性分子であり、リフォールディングを大きく介助する分子として知られている。 これら作成した膜及び基膜を用いてタンパク質のリフォールディング性能(活性回復率)の評価を行った。その結果、タンパク質の活性回復率は基膜の細孔径にほとんど依存しないことが見出だした。これに対し、活性回復率がタンパク質のバッファーへの注入速度に大きく依存することを見出だした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子機能膜によるリフォールディング介助機構の解明に向けた研究に関しては、タンパク質の活性回復率がタンパク質のバッファーへの注入速度に大きく依存する理由の解明が待たれる他は予定通りに進行していると考えている。 また研究の過程において、低温で進行するプラズマグラフト重合法(低温パーオキサイド法)を新たに見出した。例えばスルホベタインのような四級アンモニウム基を持つモノマーは熱を加えると分解してしまうことが知られているが、本手法によりこれら機能分子を失活させることなくグラフト固定化することが可能となった。これは当初の想定にはなかった新しい発見であり、新機能性材料の開発へと発展する可能性を秘めていると認識している。 これらを合わせて研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
24年度にはタンパク質の注入速度を速くするとリフォールディング性能が向上するという知見を得ることができた。具体的には注入速度を100倍にすることにより10%程度効率を高める有用な現象を見出だした。25年度にはこの現象の一般性の確認を行うと共に、化学工学シミュレーションなどを通じて本現象の機構解明を行う。また、連続法の実証実験として流通式の装置を用いたリフォールディング実験を行う。さらに、24年度に研究を通じて開発された低温プラズマグラフト重合法に関して、活性種の調査や反応機構解明、他モノマーへの応用などによる更なる応用範囲の拡大を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度においては、連続法の実証実験として、流通式の装置を用いたリフォールディング実験を計画していた。これに向け評価系構築に必要な装置の購入検討を行っていたが、一部特殊装置の納期が本年度の予算執行期間中に間に合わなかった。 そこで次年度に本装置構成要素の購入・組立及び実験を行うこととした。また本実験では失活の恐れのあるタンパク質を試薬として用いる必要があるので、実験延期に併せてその購入を次年度に回すこととした。以上のように未使用額も次年度の計画のために使用する。 また得られた研究成果を国内外に発信するために、国際学会・国内学会にて発表を行うための予算と、論文執筆にあたって必要となる英文校正・別刷り代を計上している。
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