研究課題
平成25年度は,Si-Al-Mg系複合含水酸化物(以下,Si-Al-Mg系試料)を造粒し,実際の温泉排水処理を想定した装置運転に関する事項「固定ろ床法(固定床吸着装置)の設計」を検討した。樹脂成形体としてφ2 mm,長さ5~30 mmのSi-Al-Mg系試料粒状体を作成し,これを固定床吸着装置を模したカラムに充填して実際の温泉排水と模擬排水を原水としたフッ化物イオン吸着試験を実施した。その結果,貫流容量は粉体時の吸着量にくらべ想定よりも低く,さらに温泉排水と模擬排水において同程度であった。両者の貫流容量の差に夾雑イオン等の影響が全く現れなかったことから,造粒することによりSi-Al-Mg系試料の吸着性能が発揮できなかった,あるいはカラム内に短絡流が生じた可能性が考えられた。したがって,固定床吸着装置の検討以前に造粒化技術を確実にする必要性が示された。Si-Al-Mg系試料に吸着したフッ化物イオンを再生液により回収し,カルシウム添加によりフッ素の資源化を試みた結果,非晶質のフッ素とカルシウムの結合体を得ることができた。今後,pH調整条件を詳細に検討することによって結晶性の高い物質としてフッ素を資源化できる可能性が示された。本研究の目的は,Si-Al-Mg系試料をフッ素吸着剤として実用化することである。特に個人経営レベルの小規模な温泉旅館を想定した廉価でコンパクトかつ一律排水基準の達成可能な高度フッ素除去技術を開発し,同時に吸着剤の再生方法・工程の構築と回収されるフッ化物イオンの再資源化システムを確立することを最終目標とした。研究期間を通した成果により,フッ化物イオン吸着に最適な合成方法を確立し,また再生条件を確立したことから,研究目標の達成に大きく近づいた。最終的に造粒化技術を確立することができれば,温泉排水処理に資する固定床吸着装置の実現につながるものと考える。
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Journal of The Society of Inorganic Materials, Japan
巻: Vol.20 ページ: 141-147
http://www.shimane-u.ac.jp/announce/files/PDF_seisi/seisi76.pdf