研究課題/領域番号 |
23760721
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山本 徹也 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10432684)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ミクロン粒子 / ソープフリー乳化重合 / ポリスチレン |
研究概要 |
(1)乾燥工程に強い膨潤ナノ粒子規則配列テンプレートの作製を目的に,分子レベルで平滑かつ水中で負帯電を有するマイカ表面への高分子膨潤ナノ粒子規則配列手法の開発を行った。膨潤粒子合成手法については,単分散粒子調製方法の一つであるソープフリー乳化重合法を用い,重合開始剤には末端にアミノ基を有するカチオン性のものを使用した。正帯電を有する膨潤ナノ粒子を合成し,基板と静電引力を作用させた。合成条件によって粒子の膨潤度が異なるので,それをAFMを用いて評価を行った。100 nm未満の膨潤ナノ粒子の作製に成功し,現在の最高被覆率は49 %である。膨潤粒子は,乾燥の過程で生じる粒子間毛管凝縮力に耐えうる吸着力を示すことが分かり,乾燥工程に強いテンプレート合成に成功したと言える。(2)本研究中に,ソープフリー乳化重合法によりポリスチレンのミクロン粒子の合成に成功した。最大粒子径は20 μmである。これは,ソープフリー乳化重合系に通常用いられない油溶性開始剤を用いることで可能となった。油溶性開始剤の水に溶けにくい性質を利用して,初期に発生する粒子核の数を抑制する。粒子核が少ないので,既往の理論であるラ・メールダイヤグラムに従って,最終粒子径が大きくなったと考えられる。粒子の成長途中に,電解質を添加すると,DLVO理論により更に粒子の凝集成長が急速に進み,反応時間がわずか6時間という短時間で,20 μmの粒子の合成が実現したと考えられる。このミクロン粒子の合成方法を粒子規則配列手法の開発に今後役立てたいと考えており,膨潤粒子を鋳型とした方法とミクロン粒子を利用する方法の両方面からの粒子規則配列手法の検討を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AFMによる膨潤粒子の膨潤度評価と基板への膨潤粒子被覆率の関係を明らかにする研究がやや遅れている。しかし,ソープフリー乳化重合系で合成される高分子微粒子のミクロン化に成功しており,このミクロン粒子と膨潤粒子の二方面からの粒子規則配列手法の開発に取り組むことで,平成24年度中の粒子規則配列手法の新展開を目指していきたい。ミクロン粒子の合成には,添加する電解質の価数と濃度を変化させることで,粒子径を0.5 μm~20 μmまで変化させることができる。このミクロン粒子には,従来用いられることのなかった油溶性開始剤を用いており,分散安定性に寄与するイオン性解離基が存在しない。それ故,油溶性開始剤で粒子の分散安定性が保たれる機構を今後研究すると同時に,粒子表面の物性評価を行い,微粒子規則配列の新規手法の開発を模索したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)基板上の膨潤ナノ粒子と規則配列させたい粒子との相互作用をAFMコロイドプローブ法を用いて直接測定することは,粒子間相互作用力に基づいた規則配列の設計を可能にする。被覆率が極端に低い場合は,配列させたい粒子とテンプレート間に引力が働かない系となるので,引力系となるような被覆率に調製する必要がある。またこのとき,AFMでは液中セルを用いるので溶媒雰囲気を自在に変えることが可能であり,ナノ粒子が膨潤粒子サイトへ吸着しやすい溶媒雰囲気を広範囲に効率良く探索する。(2)明らかにした膨潤粒子径,膨潤度,溶媒雰囲気の最適条件で,規則配列させたいナノ粒子の粒子濃度を操作変数として,膨潤粒子テンプレート上へのナノ粒子規則配列手法を開発し,乾燥前はAFM,乾燥後はSEMにより構造観察を行い評価する。(3)テンプレートである高分子膨潤ナノ粒子を除去する方法を検討する。除去方法として,水中で負に帯電する無機粒子,例えばシリカ粒子やアミノ基と相性の良い金粒子を規則配列する場合,その融点が高いので,加熱することで融点の低い高分子膨潤粒子のみ蒸発させることができる。その他,有機溶媒に高分子膨潤粒子のみ溶解させる方法など考えられるので,規則配列を維持した状態で膨潤粒子テンプレートのみ除去する方法を開発する。(4)ソープフリー乳化重合で合成した0.5 μm~20 μmのミクロン粒子は水中で負電荷を帯びている。これを分子レベルで平滑な雲母表面上にディップコーティング法により,基板に充填配列させ,粒子間の相互作用力を利用して有機膨潤粒子あるいは無機固体粒子をミクロン粒子膜上に配列させる方法を検討する。(5)ソープフリー乳化重合に油溶性開始剤を用いて合成したミクロン粒子の物性評価をAFMにより行い,その表面特性を物理的かつ化学的に明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品(試薬,AFMカンチレバー,ガラス器具):\600,000コロイドプローブ作製の為のマニピュレーター:\450,000光学顕微鏡用低倍率対物レンズ:\450,000学会参加費:\20,000旅費:\300,000
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