研究課題/領域番号 |
23760722
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
春木 将司 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90432682)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ポリイミド / ポリアミド酸 / 超臨界二酸化炭素 |
研究概要 |
一般的にポリイミドの分子量は中間体であるポリアミド酸と同等であるとされているが、超臨界二酸化炭素中におけるポリアミド酸の生成挙動に関する知見は皆無である。したがって、23年度は、はじめにポリアミド酸生成挙動について詳しく検討した。ポリアミド酸生成に関する研究では可視窓付き重合装置を作製した後、pyromellitic dianhydride (PMDA)ならびに4,4’-diaminodiphenyl ether (ODA)をモノマーとしてKapton系ポリイミドの重合挙動(重合中の相状態の変化)を調査し、さらにモノマー濃度と生成ポリアミド酸の分子量の関係を検討した。その結果、Kapton系ポリアミド酸に対し超臨界二酸化炭素は貧溶媒として働き、重合後直ちにポリアミド酸の析出が生じた。また、ポリアミド酸の分子量はモノマー濃度が増加するにつれ直線的に増加した。 この結果をふまえ、次に高圧ポリイミド加工装置を製作し、平板上へのポリイミド成膜を行い、微細加工技術の開発のための基礎的検討を行った。加工装置はPMDAおよびODAを溶解した超臨界二酸化炭素を別々のラインから高圧成膜セル内部へ供給するものとし、さらに成膜セル内部は基板表面のみでイミド化反応が進行するよう、独立して温度制御可能なホットプレートを内蔵した構造とした。バルク温度50℃、基板温度200℃とし1.5時間成膜し、FE-SEMによる膜断面の観察ならびにFT-IRによる組成分析を行った結果、極微細なポリイミド粒子で構成された薄膜が気相重合法に比べ非常に高い成膜速度で作製されることが分かった。さらに、膜を構成する微粒子の大きさはモノマー供給速度に依存することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は当初の研究計画である、(1)ポリイミド重合・微細加工装置の製作; (2)平滑ウエハ上でのKapton系ポリイミド薄膜製膜による反応挙動の解析について、概ね達成することができた。装置の製作については、【研究実績の概要】に示したように、ポリアミド酸重合挙動を目視観察可能な装置ならびに測定手法を考案し、モノマー濃度と相状態の変化の関係および生成ポリアミド酸分子量の関係を示すことができた。また、微細加工装置の製作では世界初となる高圧ポリイミド成膜・加工装置を開発した。成膜セルはKapton系ポリアミド酸、ポリイミドに対し超臨界二酸化炭素が貧溶媒であること、ならびにポリアミド酸からポリイミドへの反応が脱水反応であることを考慮した構造とした。つまり、成膜セルバルク中のポリイミド生成を抑制し、高温加工部のみでポリイミドが生成するようセル内の断熱構造等は多くの工夫、ノウハウを含んだものとなっている。これを用いた成膜挙動の解析では、当初の目標通り非常に高い成膜速度が達成できることを確認し、さらにKapton系ポリイミドの場合、操作条件をコントロールすることによって作製されるポリイミド薄膜の性状を大きく変化させることが可能であることが分かった。 以上の成果は、いずれも本研究によって初めて実施、明らかにされたものである。また、超臨界二酸化炭素中のポリアミド酸重合挙動については詳細な検討を行い目標以上の成果を上げたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、24年度は23年度の検討により得られた知見を基にして微細に加工された高アスペクト比ウエハに対する成膜条件の検討を行う。その際、実験に使用するウエハは本学ナノデバイスバイオ融合研究所から支援を受ける。これまでの検討により、Kapton系ポリイミド薄膜の作製では、極微細なポリイミド粒子から構成される薄膜が形成され、この粒子の大きさは操作条件に依存している。したがって、小さな微粒子が形成される条件にて微細孔表面への成膜、埋めこみを行う。また、フッ素化合物が超臨界二酸化炭素への溶解性が高いことを利用し、フッ素化合物のモノマーを用いたポリイミド加工についても検討する。 さらに、24年度は微細成形されたポリイミドへ金属錯体の埋め込むことによる金属/ポリイミド複合材料作製についても検討する。金属錯体には超臨界二酸化炭素への溶解性の高いヘプタンジオナト錯体を利用し、ポリイミド成形加工時の複合化ならびに成形加工後の複合化について、操作条件と金属錯体分散状態の関係を求める。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は高圧成膜装置の維持に必要となる高圧継手、配管ならびにバルブ等の消耗品、ならびに試薬類購入に研究費の大部分を充てる。
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