24年度は、まず、超臨界二酸化炭素中で作製されるポリイミド薄膜の膜質向上を目的として、モノマー供給濃度ならびに基板温度が薄膜の形状に与える影響について検討した。成膜装置には23年度作製した高圧ポリイミド加工装置を使用した。本装置はバルク温度とは独立した基板部温度制御が可能なホットプレートを内蔵している。基板にはアルミニウム平板を用いた。また、走査型電子顕微鏡による表面ならびに断面観察、およびX線分光分析装置(XPS)による最表面組成分析によって薄膜を評価した。種々のモノマー供給濃度において、基板温度200℃、1.5時間の成膜を行った結果、モノマー濃度が小さくなるにつれ、生成されるポリイミド薄膜の膜厚は小さくなったが、薄膜表面は滑らかとなった。一方、基板温度の影響については、250℃とした場合、200℃に比べ薄膜表面は滑らかとなった。さらに、薄膜のXPS分析の結果は、ポリイミドの分子構造より得られる理論値に非常に近いものであった。 次に、基板温度200℃の条件で幅5μm、深さ30μmの格子状微細孔を付したシリコンウエハーへの埋め込み実験を行った。その結果、埋め込まれたポリイミドには若干の疎密が生じたが細孔底部まで埋め込むことができた。さらに、金属錯体の溶解度データをイミド化反応温度近傍の高温域まで測定し、金属/ポリイミドコンポジット作製のための基礎的知見を蓄積した。 以上、2年間の本課題遂行によって、超臨界二酸化炭素中におけるポリイミドモノマーの重合挙動、ならびに成膜条件と生成される薄膜形状の関係に関する多くの知見を得ることができ、微細孔へのポリイミドの埋め込みにも成功した。超臨界二酸化炭素中でポリイミドを微細加工する技術は本研究が初めて開発したものであり、その成果を学会、論文等で発表すると同時に特許出願を行った。
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