昨年度改良したDLS(Dynamic light scattering)装置付きマイクロ波照射炉を用いて、マイクロ波照射中の貧溶媒晶析の核生成、成長挙動を観察した。これにより、マイクロ波照射により、貧溶媒の溶解、分子拡散が促進されるため、核生成が促進されることを示した。具体的には、マイクロ波照射中の貧溶媒効果だけではなく、溶液のマイクロ波照射の前処理プロセスにおいても、急激な核生成現象や2次核生成が確認された。さらに、マイクロ波照射中のナノ粒子の観察に関する類似研究によって、ナノ粒子自身の拡散もマイクロ波によって促進されることを発見した。これにより、マイクロ波照射による水などの極性分子の振動・回転は、ブラウン運動のような小さな粒子のランダム運動に影響を及ぼすことを示した。これらの原因として、周囲の溶媒分子の振動回転による分子拡散の促進だけでなく、マイクロ波照射によって、溶媒である水のネットワーク構造の変化、例えば、ナノバブルの生成による溶媒和の変化が予測された。つまり、このバブルの生成としてマイクロ波のエネルギーが蓄えられ、バブルの圧壊や核生成等による固液相変化によるエネルギーの解放がマイクロ波研究の本質的な現象なることが予想される。以上より、これらの定量的なデータは、マイクロ波照射による核化誘導の証明となるとともに、実用化に向けた有意義なデータとなる。最終的に、そのマイクロ波による機能性ナノ粒子の作成法の確立への応用が期待される。
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