研究課題/領域番号 |
23760725
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
赤松 憲樹 工学院大学, 工学部, 助教 (50451795)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ファウリング / 膜 / プラズマグラフト重合 / 表面改質 / タンパク質 |
研究概要 |
平成23年度は,低ファウリング膜開発に向けて,表面改質ポリマーとしてカルボキシベタイン系CMBポリマー,ノニオン系MEAポリマーを採用し,プラズマグラフト重合法による市販精密ろ過膜の表面改質について検討した.プラズマグラフト重合法は,プラズマ照射により有機基材膜面に活性点を作り,これを足掛かりにビニル系モノマーの重合を達成する手法であり,アクリレート系およびメタクリレート系で多くの実績がある.一般にプラズマグラフト重合法では,モノマー溶液を調製する溶媒として有機溶媒を用いるとグラフト重合速度が著しく小さくなるため,水が用いられることが多いが,CMB,MEAをグラフトする際は,モノマー溶液の溶媒として水を用いるより,50%メタノール水溶液を用いる方が,効率的にグラフト反応が進行することが明らかとなった.またグラフト重合量はモノマー濃度,および反応時間でコントロールすることができることを明らかにした.しかしMEAと比較してCMBをグラフトする方が難しく,より詳細な反応条件の検討が必要である.またこれらのポリマーの水和状態をDSCにより解析し,バイオマテリアル分野で抗血栓性を有するポリマー材料がもつ特徴と非常に類似した特徴を有することが明らかとなった.MEAグラフトにより表面修飾された膜の低ファウリング性をBSA水溶液の透過試験により評価し,未処理膜での透過試験結果と比較して,MEA修飾の高い効果を明らかにすることに成功した.特筆すべきは,条件によってはBSAを添加しても全くフラックスが低減せずファウリングしない状態を達成することができることであり,非常に大きな成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に基づき,低ファウリング膜の開発(表面修飾法の検討),及びポリマーの水和状態の評価を行った.
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今後の研究の推進方策 |
CMB,MEAともにプラズマグラフト法により化学的な膜面修飾が可能となったため,引き続き色々な有機物に対する低ファウリング性の評価を実施し,開発する膜が幅広い分野で適用可能であることを示す.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は得られた成果を考え,当初次年度に計画していた実験を前倒しで進めることが適当と判断し,そのため今年度計画していた実験の一部、具体的には色々な有機物に対する評価の実験を行っていない.結果としてこれに必要な,各種タンパクなど多くの試薬や消耗品費分を,繰越することになった.よって,次年度は研究費の多くはこれら物品費(消耗品費)で使用する予定である.現時点で1式の価格が50万円以上の物品を購入する予定はない.
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