昨年度,ノニオン系MEAポリマーを用いて膜の表面改質を行う方法を確立した.今年度は特にカルボキシベタイン系CMBポリマーによる表面改質法としてダイナミック膜法も検討に加え,CMBポリマーで表面改質した膜の,様々なファウラントに対する低ファウリング性を評価した. CMBポリマーは自身のもつ低ファウリング性が原因と思われるが,ホモポリマーではダイナミック膜法で膜面を均一に修飾することが難しいことが判明した.そこでブチルメタクリレート(BMA)との共重合ポリマーを用いてダイナミック膜法を実施することで,均一な膜面修飾が可能となった. CMB-BMA共重合ポリマーにより表面修飾が施された膜に対して,タンパク質である牛血清アルブミンやミオグロビンをモデルファウラントとして透過試験を行ったところ,未処理膜と比較して,極めて優れた低ファウリング性を発現することが明らかとなった.またこれらの低ファウリング性は,共重合ポリマーの組成比にも大きく依存することが明らかとなった. さらにCMB-BMA共重合ポリマーにより表面修飾が施された膜に対して,下排水処理では主要なファウラントと考えられている多糖類のモデル物質としてアルギン酸を採用し,これをモデルファウラントとして透過試験を行ったところ,未処理膜と比較して,一定の低ファウリング効果が認められた.ただし条件によってはこの低ファウリング効果は小さくなるため,より詳細な検討が必要である.さらに膜分離活性汚泥法で使用される汚泥を用いた透過試験も実施し,同様に未処理膜と比較して,一定の低ファウリング効果が認められた.ただし汚泥は極めて多種の成分からなる混合物といえ,主要なファウラントを特定するには至っておらず,汚泥分散液中のどのような成分に対し低ファウリング効果が認められたか,などの知見を得ることが今後の課題となった.
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